サムピック再び

 フラメンコの練習で右手親指を痛めてしまった。主な症状は指先にできた豆。無理すれば弾けないこともないと思われたが、その無理がたたって本当に弾けなくなっても困る。だから、豆が落ち着くまではギターから離れていようと思ったのだが、それでも弾こう、そんなときだから弾こうなどと考えるのが私の悪いところだ。

 しかし、親指が痛むのでは弾くに弾きにくい。どうしたものか。なに単純なことだ。指先が痛いなら、指先を使わなければいい。そう、サムピックを使えばいいって話だよ。

サムピックを使う

 私はこれまでサムピックは苦手だといって、使おうとしなかった。サムピックを使うとベース音がはっきりと浮き上がってくる。それはわかっているが、弾いているという実感が得にくいサムピックにはあまり魅力を感じることができず、だからサムピックをつけるのはほんのわずかの時間だけ。すぐに指頭での演奏に戻って、このような有り様だからサムピックに慣れるということはついぞなかったのだ。

 しかし、指先が使えなくなって、サムピックなしではどうにもならんとくれば慣れるしかないわけで、苦手ながらも付けて使ってみて、いやはや人間の順能力とはたいしたものだ。初日こそはどうにもならんかったが、翌日からはなんとなく馴染んできて、もちろん完璧なんてことはないけれど、今ではなんとなく使えるようになってきている。使えるというのはコントロールができるようになってきているということでもあり、固いばかりと思っていたサムピックでも強弱付けて弾けるようになってきた。もちろん、TABスペシャルでも同様だ。それぞれのピックは、その弾いている環境が違うためにどちらがどうだとは一概にいえないが、それでもどちらも悪くはないかも知れないなと思えるくらいにはなった。サムピック、悪くないじゃないかと思うようになったのだ。

けれど選ぶならTABスペシャル

 2種類のサムピックを使ってみて、従来方式のものは職場昼休みにナイロン弦ギター弾くときに、TABスペシャルは自宅にてD. カスタム弾くときに、こうして使ってみて、おそらく私はTABスペシャルを選ぶだろう。そういう方向性が見えてきた。

 ガツンとした強い音が欲しいときには従来方式がいいと思うんだ。TABスペシャルは想像以上にソフトだ。当たりが柔らかく、よって音もガツンとは出てこない。そのソフトさがいいという判断もあるとは思うし、けれどとにかく低音を出したいと思うなら従来ものがよさそうだ。しかし、それでも私はTABスペシャルを選ぶだろう。

 理由は非常に馬鹿馬鹿しいものだ。従来方式は環状に曲げられたプラスチックを指にはめるのだが、これ、10分も弾いていると指先の血が止まって紫色になっている。最初、やけに指先が冷たいなと思って、ふと見たら真っ青。こりゃいかんと思って、少し指先側につけるようにかえたのだが、しかしこれで止まる。だがもうこれ以上指先にピックを動かすことはできない。これ以上緩く付ければ、弾いている途中に動いてしまいそうだ。なら、私は血の止まるほうを選ぶ。だが、TABスペシャルならこうした心配は無用なのだ。

 TABスペシャルを付けて弾いてみて、私は最初うちから2番目の穴で止めていたのだが、じきに3番目に変えた。最初は緩すぎるんじゃないかと思って不安だったが、わりとしっかりと固定されて動くことはなさそうだ。このゴムのベルト、はみ出し部分を残していると弾いてる途中に他の指に触れることがあって、だから私は3番目の穴でカットしてしまうだろう。こんな風に、自分の指のサイズにあわせて微調整の利くところはユーザーとしては非常にありがたい。

 もちろんこれだけで決めたわけではないのだが、現状においてTABスペシャルが優勢という状況は揺るがないだろう。もうじき親指は回復すると予想するが、それまでにサムピックに慣れてしまいたい。せっかくの表現の手段である。この一時的な利用で済ませてしまうにはもったいない面白さに気付きつつある。だから、なおさら違和感なく付けられ、使える工夫のされているTABスペシャルは好ましく感じられる。


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公開日:2007.07.06
最終更新日:2007.07.06
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