中山丈二,堀江童子『秋冬』

 先日、リクエストされた秋冬』、これは楽譜がなければ歌えないぞというわけで、楽譜を用意した。本は全音の『歌謡曲のすべて』。その上巻に『秋冬』が収録されていることは、全音オンラインショップの情報ですでに調べてあった。買ったのは、大阪梅田の紀伊国屋書店。楽譜の売り場に上下巻そろいで並べてあって、やはりこれは定番なのだろう。

 楽譜を見ながら歌ってみれば、この曲の難しいこと、これまで耳に聴いて、適当に歌っていた時とはがらりと印象が変わってしまうほどに難しかった。難しいというのは、まず音域の広いということが一点。楽譜の調はaマイナーであるのだが、これだと最高音がG、私には少々厳しい、なのでeマイナー、4度下げして、3カポ(gマイナー)で歌えば、最高音はFになるから多少歌いやすくなる、しかし今度は低音が厳しいときたもんだ。仕方がないから4カポ(g#マイナー)で歌う、これが妥当かと思われたものの、それでも低音が響かない。だってよ、楽譜どおりにaマイナーで歌っても、低音が厳しいことには変わりないんだ。実際の話自分はずるをしていて、冒頭の下第4間のEは私には出せない音域なのでオクターブあげているし、そうすると触りが高くなりすぎて出ないからオクターブ下げているし、あっちこっちでやりくりしてなんとか歌っている(だから最高音がGになるのだ。楽譜どおりだと最高音はD)。要求される音域は、実に1オクターブと7度、ほぼ2オクターブにわたるのだ。これをきっちり再現しようとすれば、dマイナーで、最高音をG、最低音をAあたりにもっていくことになるのかも知れないが、これ、ぎりぎり出ないんじゃないかなあ、下が。なんて、試行錯誤している最中なのだ。

 この歌の難しいのは、音域の広さもあるが、跳躍の幅にもあって、6度跳躍当たり前、7度、オクターブの跳躍がばんばん出てくる。これを素知らぬ顔で歌えないと、曲にならない。表現なんて夢のまた夢だろう。といったわけで、あらためてソルフェージュの重要性が身にしみる。いやあ、本当にこれ、難しい歌なんだよ。

 けれど、今日、昼休みに歌っていたら、聴いて下さった方、リクエストの主が、本当に喜んで下さって、それは逆に私が恐縮するほどだった。なにか差し上げられたらと、ポケットに手をやられたのを制して、むしろこちらがありがたいと、嬉しかったのだとお礼をいった。まだ試行錯誤の最中なのに、あれほどに喜んでいただけたことが、ありがたくて仕方がない。励みになる。本当にいい経験をさせていただけた、そう思っているのだ。


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公開日:2008.11.27
最終更新日:2008.11.27
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