ピッキング

 ピッキングと書くとなんか鍵開けの技術みたいだが、そうじゃなくてギターの弾弦のこと。大きく分けてフラットピックを使うフラットピッキングと指で弾くフィンガーピッキングの二種類がある。私は後者、指弾きを中心に練習中。なぜ指弾きか。いきなりフラットピッキングではじめるよりも、フィンガーから始めたほうが色々に応用が利きそうだという理由である。それが本当かどうかは知らない。単純にそう思ったからというだけである。いいかげんである。

フィンガーピッキングの原理

 クラシックギターの分野ではフィンガーピッキングが基本であり、ピックを使うことはまずありえない。そのため指弾きの基本やコツといった情報はクラシックジャンルをあたれば山と手に入れることができる。以前について参考にしたアベル・カルレバーロの『ギター演奏法の原理』は、もちろんフィンガーピッキングにも有力な情報をもたらしてくれた。

関節の固定

 クラシックでは指弾きを、弾いた指を隣の弦に触れるかたちで止めるアポヤンドと隣の弦に触れず空中に浮かしたままにしておくアルアイレの二種に分類している。しかしカルレバーロは隣の弦に指をもたせ掛けるアポヤンドを不自然な弾弦法として批判し、弦に触れる触れないを分類の基準とするのではなく、弾弦時の指の関節がどこで固定されているかを問題としている。この理論を読めば、アポヤンドというのが指の第一第二関節を固定して弾く奏法というのが分かる。このように、どの関節を固定しどこを支点とするかにより、作用点である指先にかかる力をより細かくコントロールしようというのだ。

 カルレバーロのいうこれを実践できているかといえば残念ながらできていないのであるが、知っていると知らないでは大いに違いがある。

弦に対する指の角度

 関節の固定は音色、音量のコントロールに関する技術であるが、指の角度はそれ以前の問題。弦に加えられる力を無駄にしないための心得といえばいいだろう。

 弾弦時に指は弦に対して直角に動くべきである。指の平が真っ直ぐ弦を横切ることで、指に加えられた力が無駄なく弦に作用することができる。これはフラットピッキング時にも同様であり、なんらか特殊な効果を期待するのならともかく、そうでない場合は指、ピックは弦を直角に弾くのが望ましいのである。

 ギターをはじめた当初、指が弦に引っ掛かる感じが馴染めなくて、多少斜めに抜けるかたちで指を動かしていた。その方がよい音がしているように思ったのだ。あるいはそれは本当によい音だったかも知れないが、実際のところを言えば繊細で弱々しく、優しく柔らかく芯のはっきりしない音だったことだろう。

 指を直角に弦にあてるよう意識し始めて、音は劇的に変わっている。輪郭のはっきりとした腰のある音が出るのである。より優しい音を欲しいと思えば、指の固定を思い出せばよい。できるだけ第一、第二関節だけで弾けば音は優しく柔らかで、しかし弱い音ではない。しっかりと芯のある、それでいて繊細な音が出る。強い音が欲しければ第一第二関節を固定して弾く、弾弦の速度を高める、など。もしこの時指の力が反れれば、無駄に力を必要としてしまうことだろう。

 だから私は折りを見ては自分の指の角度をチェックするようにしている。


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公開日:2003.03.22
最終更新日:2003.03.22
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