神経を繋げる

 ゆっくり練習するといえど、ただゆっくり弾いていればいいというのではなくて、しっかり意識を弦を押さえる指先、弾く指先にまで届かせてこそ、はじめてそれは練習になる。それともうひとつ大事なこと。それは神経を繋げることである。

脳と身体のつながり

 野球なんかでシートノックに送球練習を組みあわせるのは、他でもない、捕球した後すぐ走者を刺せるよう、捕球から送球への流れを身体に覚え込ませるのが目的である。ボールを捕ってさあ投げようと考えているようではすでに遅い。ボールを捕った時にはもう投げるべき塁に向けて送球フォームにはいっている、これが理想である。

 シートノックでの送球練習というのは、この捕球から送球のパターンを確実に、考えるまでもなく実行できるよう、身体動作、神経を繋げるものなのである。神経がうまく繋がっていないと、実際の場面でまごつくことにもなりかねない。一瞬が大きく結果を左右しますよ。ゆえに重大なのである。

 実はこれはギターでも同じ。うまく神経が繋がっていない例として、手をパーに開いて薬指だけをばたばたさせてみるとよく分かるのだけど、小指や中指が薬指につられて一緒に動いてきてしまう。これは薬指の神経が適切に繋がっていないために起こる。普通の人だとこの中指薬指小指辺りの神経は訓練不足のため未分化で、薬指を動かそうとしても、その動作命令が他の指にも流れてしまって、それでつられてしまうわけだ。

 訓練している人、例えばピアニストなんかだと、気持ちいいくらいばらばらに分離して動いたりして、ちょっとうらやましい。

神経を鍛える

 ギターの場合特に問題となりやすいのは、右手弾弦側ではなく、圧倒的に左手押弦側である。これは単純な理由で、弾弦側に来るのは大抵利き手だからというだけのことで、でも分離できていたほうがいいにこしたことはない。

右手

 右手の場合問題になりやすいのは、mとa、中指薬指での弾弦だろう。mamaと交互に弾く場合に、途中でうまく均等に弾けなくなってくるのは多くの人が経験していると思う。imの交互なんかは、そもそもが日常よく使う人差し指と中指だから、放っておいても普段の生活の中で鍛練されてるものだが、あんまり薬指とか使う機会ってないから、普通の人は大抵薬指小指の細かい動きは苦手だ。

 以前にいっていた、薬指が不器用なため音が悪い問題もこれに近いものがあるが、結局これは指を使ってやるほかない。うまく弦をつかんでくれるように、そして中指につられないように、中指もつられないように、ゆっくりから速く、確実に神経を鍛えてやる。

左手

 そして左手の問題は右手よりも深刻だ。まず利き手でないというハンデがある。加えて、弾弦では滅多に使われない小指を普通に使うという問題もある。そして慣れないコードを押さえるとき、込み入った部分を弾こうとするときの、複雑な運指。こんなかたち、ぱっとは押さえられないって思うことは、誰しも同じだろう。

 しかしそうした複雑、困難な運指、手のかたちでも、やっていくうちに次第に押さえられるようになってくる。最初はなんとか押さえられる、音がびびらなくなったというところから、次にはアルペジオで弾けるように、最後にはストロークでの演奏時に瞬間的に押さえるように(これができないんだ)レベルアップしていくのは、手の神経が繋がっていくからだ。

練習時の心掛け

 漫然とゆっくりと、間違えないように慎重に弾くだけではなく、指がしっかりとその動作を覚えるようにしなければならない。ハイポジションからローポジションのバレーコード(セーハを伴うコード)へのジャンプが苦手なら、ゆっくりと、本当にゆっくりと、指だけ動かして、ローコードへと移る。このとき大切なのは、指が最終型に間違いなく落ち着くようにすることだ。このかたちを指の動きとして定式化してしまう。それができるようになったら、ゆっくりと、一定のテンポで弾けるようにする。これを繰り返すうちに、考えなくても手が勝手にコードを押さえられるようになるのが理想だ。

 どうにも押さえられない、指の吊りそうななフォームがあっても、最初はぷるぷる震えながらでもとにかく押さえる。そして運指をゆっくり確実にやる。腱が伸びていたたた、となってもとにかくゆっくり、ちょっとずつでいいから指を慣らしていく。

 特にこの押さえられないフォームを押さえようというときに、神経が繋がるようにと思う。だんだん指が楽になっていくにつれて、神経が繋がっていくと感じる。これが大変でしんどいんだけど、気持ちいいんだ。

 ああ、今繋ぎにいっている、繋がっていくという感覚。これを得るためだけにギターするのだとしても、充分だろうと思うよ。


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公開日:2003.10.26
最終更新日:2003.10.26
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