ばたつく左手

 指がばたばたするんですな。音階の練習とか、コード押さえてるときとか、小指が立っていたり、薬指が突っ張った状態になってたり、中指が危険なかたちになってたり。これはいけない、いけませんな。いや、別に米国では指にモザイクがかかるとかそういうのが問題なのではなくって、単純に運指の効率が落ちてしまうからだ。

スムーズな左手

 そもそも左手は不器用であるし、特に薬指は中指、小指の動きにつられて動きがちで、実際のところこうしてつられてしまうほうが普通なのは分かっている。けれどこのつられてばたばたするということが、すぐさま運指に影響するから問題なのである。

 指が突っ張ってしまうと、どうしても指板から指までの距離が大きくなってしまい、その分ロスがでてしまうのだ。ピアノを弾く人なんかは最初にきっちり仕込まれると思うが、軽く手を握るようにして丸くフォームを保ち、指を必要以上に持ち上げないよう訓練する。これはなぜかというと、力が効率的に鍵盤に伝わるようにということであるし、それに運指にロスを生じさせないためだ。だからよく訓練されているピアニストは、驚くほど指が独立して動く。もう本当に美しく動くから、訓練というのはすごいものだと感心してしまうよ。

 こうしたロスに関しては管楽器でも同じで、音孔から必要な分だけ指を上げて、それ以上はばたつかないようにしなければならない。音孔から無駄に指を上げると、その距離分ロスが生じるし、押さえ損なう可能性も高まる。なので上手な奏者ほど、無駄なく指が動いていることが分かる。それにばたついてる指は見た目にもうるわしくないからね、と知り合いのリコーダー奏者はいっていた。

 まあそんなわけで、ばたつく指は美しくないのだ。そしてこれはギターでも同じである。

訓練はどのように?

 さて指のばたつきが問題であることは分かった。では次は当然訓練するということになるが、これはどうすればいいのだろう。

 おそらくこうしたことには効率的な方法というのはないのではないかと思う。大切なのは日頃の練習時に気をつけることであり、スケールやアルペジオ、コードワークの練習をする際、よくよく気を配るぐらいしかないだろう。速く弾くことばかりを気にして、指がばたばたしてるのを見過ごしにしていれば、いつまでたっても見苦しい左手が改善されるわけがないのであるし、やはりここはちょっとゆっくり練習していくしかないものと思う。

人に教えてもらった方法

 さてもったいぶるのはこのくらいにして、実は以前ギター科の学生に教えてもらった方法があるのだな。

 その方法というのは非常にシンプルなもので、まず左手の指をすべて(もちろん親指は除くぜ)指板に置いてしまう。そこから一本ずつ隣の弦に移動していくというもので、もちろんその間、他の指は指板上に置いたままだ。1指、2指、3指、4指と隣の弦に移れば、同様にしてさらに隣の弦を目指す。こうしていったりきたりをするのだな。

 これをやれば、どれほど自分が不器用であるかはっきり分かるのだな。指の神経は主に親指、人差し指そして中指に重点的に発達させられていて、薬指小指はおざなりだ。このように未分化な中指薬指小指は、別の指に発せられた信号を受け取って動いてしまう。これが指がつられて動くメカニズムであって、そしてこれは訓練でどうにかなる問題である。

 指を意識的に一本一本動かすという訓練を繰り返し行って、中指薬指小指の神経をばらばらにほぐして整理してやると考えればいいだろうか。

 ホセ・ルイス・ゴンサレスの『ギター・テクニック・ノート』をみると、さらに別の練習法が紹介されている(第3章)。それはここでは細々説明しないが、つまりはクラシックギターの世界では当然の練習課題であるわけだ。

 ああ、私も精進しよう。けどこの練習をすると、指がつりそうになるんだね。ああ、訓練不足が悪いのだ。


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公開日:2004.10.24
最終更新日:2004.10.24
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