ある雑誌の終わり

 私が唯一購読していたギター雑誌が終わってしまった。その雑誌というのは、ヤマハミュージックメディアから出ている『大人のギターマガジン ギター倶楽部』。『GO! GO! GUITAR』というヤング向けのギター雑誌の増刊で、ことさら大人向けの内容というわけでもなかったが、さすがにジュブナイル向けとは一線を画していた。

 当初は方向を決めあぐねていた『ギター倶楽部』であったが、二年目第5号からは、高級ギターの試奏企画が巻頭を飾って、憧れのマーチンギブソンを聴くことができた。いや、私には別にマーチンやギブソンをことさらありがたがろうなんて気はなかったから、さまざまなグレードの楽器、材の違い、奏法の違いに起因する音の違いを聴けるというのが嬉しかった。生意気にもギターをオーダーした私だが、あまりに経験のなかった私には、このCD対応企画は貴重な情報源であった。今、アストリアスの良いギターを手にして、なおさらビンテージへの憧れは薄れつつあるが、しかしそれでも、この雑誌の価値は変わらないと思っている。折りに聴いては、楽器にではなく、その出音に憧れている。

 思えば、私のボサノバの教本はこの雑誌であったのだ。他にもボトルネックやロックで使われるペンタトニックへの接近も、この雑誌からであった。特定のジャンルに偏らず、広く浅くであったが、いろいろなジャンルに触れることのできるこの雑誌は貴重だった。未だ自分の取り組むジャンルを決められない私には、非常によくあっていたと思う。

 しかし、この雑誌は第11号で休刊が決まった。この雑誌を気に入っていた私には青天の霹靂で、売れていなかったのだろうか。心の底から残念に思っている。

 私はまだ駆け出しで技術がなく、収録の楽譜や教則をほとんど弾かないままに放ってある。技術が高くなれば、これらにチャレンジして、いつかはすべてを弾けるようになろうと思っていて、――だから、私が既刊を満足に味わい尽くすことができたその時に、復活してくれているといいと思う。その時にはまた買うから、毎号を買っていくから、きっと復活してくれるよう今はただ願っている。


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公開日:2005.06.28
最終更新日:2005.06.28
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