握力

 ギターにおいて握力は音色に直結する重要な要素である。弦をしっかりと押さえることができるかどうかで、音がびり付くかきれいに伸びるかが変わってくる。だからギタリストは握力を鍛えなければならないのだが、私のとにかく力という字が付くことはとにかく苦手でいかん。握力も同様、とにかく人並み以下の握力で頑張らねばならんので、非常に辛いものを感じている。

押弦に用いる力

 正確にいうと握力ではなく、弦を指板に押しつける指の力であるため、握力があるイコールよい音がするではないので注意が必要だ。ものを握るときには当然掌からの力を使っているのだが、押弦に使われるのは指の付け根から先へ向かってのみと考えてもいい。

 普通の生活をしていると、指の力ばかりが鍛わるということはあまりないから、意識的にこのあたりの筋力をつけてやらねばならないのだが、どうすればよいというのだろう。

器具を使う

 普通に握力を鍛えるのならグリップなんかを使えばいいのだろうが、これだとギターに必要な力である指の筋力とは違うところが鍛わってしまう。ギタリストのために指一本一本を鍛える器具というのも出ているのだが、これも違うところが鍛わるとかであまりお勧めではないらしい、と以前チェンバロを弾いている人間から聞いた。その人(というか先生だったのだが)がいうには、スポンジでできたバレーボール大のボールがいいらしい。

 ボールを片手でつかんで、指の第二関節から先で握ってやるのだそうな。はじめはたいした負荷もないように感じるが、長くやってくるとだんだん辛くなってくる。それくらいの、やんわりとして、しかししっかりつかめる筋力というのが楽器演奏には重要なのだそうで、力任せにギューというのではいかんということは感覚的にも納得できる。

 鍛練はテレビを見ながらとかでもよいらしい。だが、そんなスポンジのボールってどこで売ってるのだろう。件の人の研究室以外で見たことがないのだが……

ギターで鍛える

 器具の入手ができないならばギターを使えばいい。ギターを器具に使うのではなくて、とにかくギターを弾くといいのだ。

 以前サックスを吹いていたことがあって、管楽器は弦楽器よりも身体に寄る部分が多いからより以上に鍛練する必要もあるのだが、例えば腹筋、肺活量、加えて握力などなど、しかしあえてこれらを鍛えるためだけにトレーニングをする必要がないといっていた人がいた(というか、ほかならぬ先生なのだが)。

 楽器に必要な筋力は、楽器をやっているうちにつく。無理に腹筋や握力などを鍛えようとすると、へたすれば楽器にとって不要な筋肉もついてしまい、アンバランスになってしまう。なので必要な筋肉をピンポイントで鍛えるには、正しい奏法で正しく楽器を弾いてやることに尽きるというのがその人の持論だった。

 ちなみに管楽器において握力は、キーを押さえるのに重要になる。理想的な管楽器のキーは、針ばねの力がなくなったときにぴったりと穴を塞ぐというものなのだが、そう理想的にもいかないものだし、なにより狙ったタイミングでできるだけ素早くキーを押し込んでやらなければならないというのが現実だ。だからそのための握力が必要になる。揺らぎのない運指のためには握力(というか指の力)が求められるのだが、残念ながら管楽器に必要な力以上にギターは握力を必要とする。

 だから、昔管楽器に必要な握力を培っただけの時間を使って、ギターに必要な握力を鍛えてやろうかの。とりあえずは今日の一歩から。一回一回の押弦をいいかげんにせぬよう心掛けるとしようか。

余談

 ギターは握力を必要とするものだから、何時間も練習していたら、特に音階なんかを何時間もあがったりさがったりしていたら、指がくたくたになってしまうのだ。本当に馬鹿になってしまうくらいに疲れてしまうので、ものをとる際には意識的にしてやらないと、取り落としてしまいそうになる。

 というわけで、以前お茶のはいったポットを落としたことがあった。当然机はひどいことになった。

 まあ、こういう負荷をかけてやることで筋力はつくのだから、だるくならない程度の練習では意味もないのかも知れんけどね。


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公開日:2003.09.14
最終更新日:2003.09.14
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