三絃における指先にできる水泡の処理について

 私の右手薬指には、まめの水泡ができている。弾いてると痛いが、それも最初だけのことで、十分少しほどで痛みがなくなる。痛みがなくなるのはいい。水泡があるため、また感じないだけでやはり痛いのだろう、加えられるべき力がそれて鳴りが弱いのが気になる。

 だが、それも今だけのことだ。直きに指先の皮膚が厚くなって、こういった問題もなくなる。薬指が人差し指と同じになるのだ。

 以上は私の考えかたであって、しかしおおむね一般のギタリストも同じ考えだろう。弾いているうちにまめができる、皮膚がかたくなる、そして最後には強くて柔軟な皮膚ができる。実際に、私の指もこのプロセスをたどっている。最初の数ヶ月、左手指先は弦を押さえる部分にまめができ、水泡が痛くてならなかった(だからウクレレを買った)。次の数ヶ月間は、指先にかたくかたくがちがちの角質の塊ができて、弾きにくくてほとほとまいった。しかし現在は皮膚こそ強くなったが、かたさは感じない。柔軟で、しかし弦に負けない指に育ってきている。

邦楽での考え方

 友人の三絃奏者がいっていたのだが、邦楽では(少なくとも彼女の流派では)上にいったようなプロセスはたどらないらしい。

 三絃には、押絃する左手指で絃をはじく技法があるらしい。見せてもらった。見事にはじいている。ギターでいえばプリング・オフみたいなものだが、この弾きかたをしていると、やはり左手指先にまめの水泡ができるらしい。

 水泡ができると演奏にはまずい。が、同様にこの水泡がしっかりしたまめになって、かたい皮膚になるのもまずいのだそうだ。柔らかい音が出なくなるからである。音がかたくなるのは好まず、だから左手指の角質化を阻止する手段に出ると聞いた。

 その手段とは、まめの水泡を、丸く切り取ってしまうのだそうだ。そんなことして弾いたら痛いやんか。痛いよ。どうするの。我慢してそのまま弾くよ。

 私はその時、邦楽の人というのはすごいと思った。いや、洋楽の人もすごいよ。練習量の多さ、技術優位の世界の厳しさはどちらも変わりないし、要求される性根の強さも同じだ。私の先生(クラリネット奏者)は、胆石で十センチ近く切ったというのに、退院した日から練習している。ピアニストの友人たちも、毎日一日何時間も弾いている(だから、私はちっともすごくともなんともないのである)。だから、その三絃奏者がとりわけすごいとはいわないけれど、けどまめをきれいに取ってしまうというのは! しかもそれで絃を押さえ、その上はじくとは! 姐さん、真皮が見えてるんですよ!

 考えるだけで痛い話であるが、意気込みというのはこういうことをいうのだなと思った。躊躇なく尊敬するに値する。だから私も、くじけずめげず、にげずなまけず、今日も練習頑張ろう。


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公開日:2004.01.07
最終更新日:2004.01.21
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