原題:east is east
1999年/イギリス/1時間36分
脚本:Ayub Khan-Din
監督:Damien O'zdonnell
配給:クレストインターナショナル
文化というものはまったくもって越えがたい。お互いが深く愛しあっていても、最後の最後に立ちはだかるのは文化の違い。どれだけその溝を、両岸から埋めあってお互いに近づいていけるか。これが、ともに生きるためには大切なことだ。だけどそのことを、パパがちょっと忘れてしまっていたら……
イギリスに暮らすパキスタン人一家。けれどお母さんはイギリス人、子どもたちもイギリス文化で育って、そこが敬虔なイスラム教徒であるお父さんにはもどかしい。お父さんは強引にイスラム文化を押し付けて家族から怖がられているけれど、すべては善かれと思ってのこと、この無邪気さがむしろ愛らしい。家族は家族で、お父さんの目を盗んで好きなようにやっている。この微妙なバランスがお父さんの暴走で揺らいでしまって、子どもたちの反発は強まっていく。
パキスタン人との結婚を強いられようとする次男三男はなんとかお見合いの陰謀から逃げようとして、末っ子のサジは無理矢理割礼されて怒ってる。家を飛び出しもしたけど、やっぱり戻ってくるのはそれが家族だからなのだろう。決定的に憎んではいないところにほっとする。
この映画で光ったのが、サジの友だち、アーネストだ。彼の父親は移民排斥を唱える政治家の後援者なのだが、アーネストはこの移民一家を嫌いじゃないのだ。映画も終わり近く、子どもたちに結婚話をぶち壊されてすっかり打ちひしがれたお父さんに出会ったアーネストが、「サラーム」とイスラム式のやり方で声をかける。
この場面に、文化の壁を軽々と越えていける準備ができている新たな世代の誕生を感じさせられた。無用な偏見や偏狭な固執に惑わされない、あくまで自然な人間関係が満ちていくうちに、きっとこのお父さんもだんだんと歩み寄って、イスラムでもなくイギリスばかりでもない、新しいカーン家の文化を作っていけるんじゃないかな、何度もぶつかり合いながら時間はかかりそうだけど。
評点:3+
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