あるインタビュー

 今年のエイプリルフール企画は、こととねとしては異例のインタビュー形式でお送りいたします。二年前に起こったある事件に関係した人をお招きしてお話を伺ったのですが、その話をここに公開する条件として以下にあげるいくつかを承諾する必要がありました。曰く、

 私は当初この記事を公開するにあたりちょっとだけインタビューをその公開場所としたいと希望したのですが、それははたされませんでした。また、日々思うことなど権利と自由カテゴリーに公開したいとも考えたのですが、それもはたされませんでした。すなわち、本記事は四月一日の嘘カテゴリー下に公開されます。

 本記事において記された内容はすべてエイプリルフールの嘘であることをご了承ください。また、この件に関するいかなる問い合わせもお受けできないことも併せてご了承くださるようお願い申し上げます。

まずは自己紹介あたりから

snowdrop(以下s):

まずは自己紹介をお願いいたします。

a:

名乗るほどでもないので、aとでもしてくださればいいと思います。二年前、ちょっとした事件に関わって、二ヶ月ほどサイトを管理していました。

s:

その事件に関わる発端というのはいったいなんだったのですか?

a:

たいしたことではなかったのです。ネットの掲示板を見ていたときに、偶然この件に関する書き込みがあるのを見つけて、最初はデマかなんかだろうと思ったのですが、自分にまったく関係のないことでもないからと、その書き込みにあったリンクをたどって本スレッドにいってみたというのが最初だったと思います。

s:

掲示板の書き込みを見たとき以前にその事件については知ってましたか?

a:

いいえ、まったく知りませんでした。

s:

このあと、aさんはこの件に関するまとめサイトを作られることになるのですが、それはいったいどうしてだったのでしょうか?

a:

たいした理由があったわけじゃないんです。ちょっとした思いつきというか、掲示板でまとめサイトが必要だねという意見が出てきて、じゃあ私はHTMLも書けるし、ちょっとくらいなら手伝いますよって、そんな簡単な気持ちで引き受けたんです。まさかそれがあんなに大変になるとはまったく思いもしませんでした(笑)。

s:

いつごろだったかは覚えていますか?

a:

覚えていますよ。ちょうど今ごろ、春先でした。サイトづくりに着手したのは、4月4日だったと思います。多分、一生忘れません。

大変だったこと

s:

先ほど少し触れられました、大変だったことというのはどのようなことだったのでしょう。答えられる範囲でよいので、お聞かせ願えますか?

a:

まず第一に情報の整理が大変でした。私は本当に甘く考えていたんです。放っておけば誰かが掲示板に情報を載せてくれるから、それを適当にピックアップしてサイトにのせるだけでいいと思っていたんです。ですが大間違いでした。

 よく情報のソースだなんていいますが、その情報がどれだけ信用できるものかを見極める必要があるということを忘れていました。載せるだけなら簡単なんです。ですが、その載せたことでなんらかの反応があるわけですから、私が間違って嘘を載せたりすると迷惑のかかる人というのが出てきてしまいます。だから、掲示板に出てきた情報でも、載せるべきかどうかを判断しないといけなくて、その見極めが本当に大変だったと思います。

 それと、待ってるだけじゃ情報ってこないんですよね。自分で集められるくらいのことは自分で集めないと、誰も助けてくれないんです。これは本当にそう思いました。関連する掲示板(スレッド)のリストとかも、まず私が集めはじめないと、修正であったり追加であったりというのは得られませんでしたし、とにかくできることはまず自分でやるようにしました。これは誤算でしたね。本当に、黙って情報を掲示板からサイトにコピーしてペーストしていたら、次から次へと新情報が提供されるものだと思っていたのですから。

s:

ということは、情報は自分で集めたものの方が多かったのですか?

a:

いえ、そんなことはないですよ。結果的に、私が集めたものの何十倍もの情報が寄せられました。私が集めたのは関連する掲示板(スレッド)くらいでしたが、インターネット上の記事とかはすべて有志の人たちが見つけてきてくれたものです。でも、まさかサイトへの掲載許可を私がとらないといけなくなるとは思いませんでしたけど。これも、大変だったことのひとつでしょうか。

 あ、大変だったの、思い出しましたよ。メールと掲示板の管理でした。掲示板というのは、私の運営していたサイトに一般的なレス式掲示板もあったのですが、これを管理しないといけませんでした。というのも、情報提供は主にスレッド式の匿名掲示板でおこなわれていたのですが、当時は今以上に匿名掲示板への偏見も強かったし、だって電車男以前ですから、普通の人は参加しない場所だったでしょ? って普通の人というのもどういう人なのかよくわからないいい加減なくくりに過ぎないんですけど。

 とにかく、この件について話をしたいけれど、匿名掲示板には抵抗があるという人用に掲示板を作る必要があるといわれて、なんでか知らないんだけど、素直にしたがって作っちゃったんですね。それに、メールアドレスもそうで、サイトに連絡先がないのは問題だからメールアドレスを書けっていわれて、なんか釈然としないものもあったんですけど、じゃあメールアドレス用意しないといけないなって(笑)。捨てアドレスって嫌いなんですけど、そういうのでいいかなあなんて思っていたら、ちゃんとしたプロバイダのものじゃないと信用されないからっていわれて、しかたがないからそれも用意して、でもなんかこのへんは私はいいなりですね(笑)。

s:

メールアドレスを公開されたわけですが、いろいろなメールがきたんじゃないんですか?

a:

ええ、きましたよ。本当に、たくさんきましたね。一番多かったのは問い合わせで、どういうことか教えてくださいっていきなり質問からはじまって、といっても、サイトにはFAQなんかも用意してたんです。だからそれを読んでもらうのが一番早いんですけど、FAQへどうぞっていうのもなんか冷たい感じがしたから、簡単に説明して、詳しくはFAQも読んでくださいっていう風に書いてましたね。

 次に多かったのは、応援とか激励でしょうか。私は、あの時、法案に反対しているサイトへのリンクを作っていたのですが、応募してくれる人ががんばってくださいって書いてくれていることが多くて、あれは本当に支えになったと思います。あと、リンクとか関係なしにがんばってくださいって。本当にありがたいと思いました。

 情報や素材の提供もありました。残念ながら全部は載せきれなかったんですけど、というのも期間の問題もあったし、それにあんまりにも大きな情報過ぎて、私では判断できないようなのもあったし、けど載せられそうなものはどんどん載せていって、そうするとその人もやる気が出るのか、またいろいろ送ってきてくださって、街頭活動に使うようなものは、そうやって充実していきました。

s:

嫌がらせみたいなのはなかったのですか?

a:

ありましたよ。でも、意外と嫌がらせのメールみたいなのはこないんです。やっぱり、送信元が出るから送りにくいんでしょうね。でも、それでもしつこく送られてくるのがいくつかあって、私はそれでも全部読むようにしていたんですが、途中で我慢の限界に達しちゃって、迷惑メール設定をしてサーバで削除するようにしたのもあります。

 嫌がらせのメールがこないかわりに、SPAMとかウィルスメールがいっぱいきました。でも、これはサイトを見ている人がそれだけ多いということなのかも知れないから、嫌がらせとかとは違うかも知れませんね。でも、知らないメールマガジンとかがいっぱい届くようになったのは、明らかに嫌がらせだったと思います。さいわいパンクするようなことはありませんでしたけど、でも末期の六月くらいには、かなりの量のメルマガを購読していました(笑)。

s:

他には苦労みたいなのはありませんでしたか?

a:

そうですね。苦労というとちょっと違うかも知れないんですけど、あの時、私たちは、少なくとも私は、別になにかの集団や組織に属していたわけでもなく、問題意識を持って集まってきただけの人間だったのですが、でもまわりから見ると、なにか裏によくわからない組織があるんじゃないかとか、そういう風に見られるのがいやでした。

 そういう問い合わせもやっぱりあって、どこかの政党と関わってるのかとか、目立って動いてくれた国会議員が特定の政党に集中していたものですから、どうしてもその人たちをクローズアップしてしまうじゃないですか。だから、その党の支援者じゃないのか、世論誘導しようとしているんじゃないかとか、かなりいわれましたし、掲示板とかにも書かれました。実際にはそんなつながりなんてまったくないわけですから、そう思われるのもしゃくなので、全部の政党を敵に回すつもりで意地悪なページを公開したりもしました。

 でも、そんなことをいってる私も、やっぱりどこか、うまく使われているんじゃないかという心配というか疑いというかがあって、やっているうちにそういうのはなくなってくるんですが、でも最初の方はかなり心配しました。下手をしたら、善かれと思って多くの人をだましてしまうことにもなるのですから、選択を誤ったのではないかと本当に不安でした。結果的にはよかったと思います。ですが、最初は不安で仕方ありませんでした。

s:

その利用されるということについては、私も傍から見ていて心配していました。私も複数の掲示板を見て、事件の推移を追っていたひとりですが、とにかくいろいろな意見のなかにある一定のバイアスを持ったノイズが入り乱れていたのを覚えています。

a:

そう、そのノイズについてなのですが、あの工作員と呼ばれたような人たちは本当にいたのでしょうか。私たちは反対活動をしていたわけですが、賛成派の人が賛成の意見を書き込むと工作員とかいって排斥しようとしますよね。私は、そういうのだけは避けたいと思って、反対の意見も賛成の意見も両方をちゃんとすり合わせて、あの法案に意義があるなら、その意義を見いだしたいと思っていました。だからそうした意見をもって書き込んでくれる人たちを工作員というように呼ぶのは、私としてはどうしても受け入れられないことだったんです。

 でも、そうじゃない人もいて、そうじゃないというのは単純に場をかきまわそうとする人のことなのですが、例えば署名を集めていたときに、名簿を売られるとか、その署名を全然違う目的に使われるぞとか、そういって脅す人がいましたよね。あと、一時私が表立って攻撃されたことがあって、そういうのも含めて、やっぱり工作員って呼ばれるような人たちは存在したんでしょうか?

s:

いや、私に聞かれても困るんですが。なんといっても私は常にオブザーバーでしたし、それに今はインタビュアーですし、なんといったらいいのか。正直なところをいうと、いたんじゃないかなと思っています。ほら、[本名]さんの偽物が出たことがあったでしょう。

a:

そうなんです、私もそこが引っかかるんです。ちょっとした行き違いがあって私が謝らないといけなくなったんですが、その時の態度があんまり弱腰だったからだと思うんですが、こいつは押せば倒せると思われたんじゃないかと思います。掲示板でいろいろ攻撃されて、偽物も出て、そういうメールがいっぱいきたのもその時です。

 で、はっきり覚えているんですが、あんまりに頭にきたもんだから、手もとにある情報であんまりにやばそうだから出してないやつがあるんだけど、私を怒らすつもりなら出しちゃうよって脅してみたら、ぱたりとやみました。そのやみかたがすごくはっきりしているように感じたから、これは本当に敵がいるのかも知れないと思いました。

s:

そのやばそうな情報というのははったりだったんですか?

a:

残念ながら、はったりではありませんでした。その時点ですでに、私宛てにいろんな情報が寄せられていたのですが、なかでもやばそうなのがひとつあって、FAXの写しだったんですが、この件に関する指示がなされているのがあったんですよ。それには私のよく知ってる会社の名前が入っていて、やばいーって思ったから瞬間に伏せたんですが、もしかしたら工作員って呼ばれている人の中には、本当にそのFAXの会社とかそこに関係している人がいるかもって思っていたんです。だから、鎌をかけたんですが、それがあんなにも鮮やかに効いたもんだから、いやになりました。だってね、本当にそうなんだって思っちゃったんです。その会社の商品は私もいくつも持っているんですが、あの時は複雑な気持ちでした。いや、今も持っているし、買ってますけどね。

s:

そのFAXって、見せてもらえますか?

a:

駄目。絶対駄目です。死ぬまで誰にも見せないと決めていますから。

よかったこと

s:

では逆にお聞きします。この件を通してよかったことというとどんなことを思い出されますか?

a:

よかったこともいっぱいありますよ。まずは、そうですね、なんかネット上のことを信じられるようになったというか、私はネット上のことは水もので、出会った人もどうせいつかばらばらになるだなんて思っていたんですが、それでもひとつの目的のもとに集まって、連帯とかいうのかなあ、そういう感じでがんばれたのはよかったです。

 本当にいろんな人と知り合いになれたんですよ。学生さんとか、仕事されてる方もいて、自分の専門性をいかして手伝ってくださった方もいて、[私の名前]もちょっとは手伝ってくれたよね、他にも支えてくれた人はたくさんいて、あのとき一緒にがんばったみんなは本当にいい人たちだった、本当だったと思います。

 追いつめられたみたいな気分になって、もうやめたいっていってしまったときも、支えてくれた人がいたから最後までがんばれたんです。いやな気持ちにさせられることも多かったのですが、それ以上に私を支えてくれる人が多くって、あの時は本当に嬉しくて、思い出しても涙がでそうになります。

 忘れられないのが、いっちゃっていいのかなあ、中学生の女の子からメールをもらいまして、この件には私も反対です、ぜひ署名をしたいのですが私たちみたいな中学生でも署名できますかって、本当にきっちりとした文章でメールをくれまして、私はそのメールを見て反省しました。本当は、私たち大人がしっかりしないといけなかったんですよね。なのに、本当のぎりぎりまでなにも知らないでいい加減にしてしまっていて、ほら選挙とかもいい加減でしょう。

s:

私はいってますよ。

a:

私もいってますよ。でも、そういうこといってるんじゃなくて、なんにも知らないでしょ、政治のこととかなんにしたって。で、こういういい加減な私たち大人が、中学生にこんな悲痛な文章を書かせちゃったんだなあと思って、本当に反省したんです。

 だから衆議院のサイトにいって署名について調べて、中学生でも署名はできるって調べて、返事を出したんですけど、ああいうしっかりした子がまっすぐ育ってくれたらこの国もまだ大丈夫かなって思えました。あの子のメールは、私にとっての希望ですよ。今もですよ。

s:

メールは読み返したりはするのですか?

a:

いいえ、読み返さないです。完全に思い出にしようと思って、サイトを閉じて数日後に、サイトもメールも一切合切を圧縮してCD-ROMにして、ちゃんと大切に保管しています。だから当分これらを見ることはないと思います。ただ、思い出の中にあるだけです。

s:

質問の途中でした。ほかによかったことはありませんでしたか?

a:

これは私個人のことなんですけど、世の中について疑うことを学びました。

s:

さっきとは逆ですね。さっきは信じられるようになったといっていました。

a:

あ、本当だ。逆のこといってますね。でも、違うんです。

 私は子供のころからあんまりものを疑ったりしてこなかったのですが、ほら新聞とかテレビとか、人のいってることとか、そういうことをふーんって聞いて鵜呑みにするようなところがあったんです。でも、あの事件に関わってからは、世の中っていやなところだなあ、すごく裏表があるんだなあと思うようになって、いやなことなんですけど、どこかに疑いの目でもって見ようとするようになりました。

 でも、これも駄目だと思うんですけどね。なんか裏に利権があるんじゃないかななんて勘ぐるようになって、ちょっと人は悪くなってしまったと思います。

s:

いや、[本名]さんは今でも変わらず素直でいい人だと思いますよ。

次があったらどうしますか?

s:

ちょっと質問の趣向を変えてみようと思います。もし、なにかまたこういうような事件があったら、参加しようとかは思われますか?

a:

その時にならないとわからないですけど、参加しないんじゃないかなと思います。少なくとも、サイトを作ったりはしません。だって、もし今こういうことがあるならWikiを使いますよね。あれ、すごくいいと思います。二年前にWikiがもっとポピュラーだったらよかったのにってよく思います。

s:

Wikiですか。確かに、不特定多数の人間が情報をまとめられるWikiは便利であると私も実感しています。ですが、これは仮定の話ですが、あのときWikiがあって、まとめサイトがWikiで運用されていたら、つまりあなたがいなかったら、あんなにもまとまりのある活動になったかどうかと思うのですが。

a:

それについては私は答えられませんよ。でも、私の実感としてですが、私がはたした役割は最初の導入くらいで、その後の展開は私の手を離れていたと思っています。[署名を集めるために開かれた]オフ[会]も、オフ専用に特化した掲示板を作ってくださった方がいらっしゃって、私の負担が減ったのと同じだけ、私の役割も軽くなりました。オフの掲示板もそうなんですが、そうやって皆さんがいろいろな役割をはたそうとしてくださったから、あの活動は破綻もせずに最後まで乗り切れたわけで、だから私のサイトが特別ななにかというわけではなかったんですよ。

 あ、そうそう、これって大変なことのところでいっといたほうがよかったね。でも、ちょっといわせてね。

 たくさん人が集まるというのはすごいことなんですよ。サイトのアクセス数とかもチェックしてたんですけど、多いときは一日に数千人とかが見てるんです。そうなると反応もすごくって、質問が多いというのはもういいましたけど、それだけじゃなくて、なにをしたらいいですか、なんでもいってくださったらやりますよっていう感じのメールもたくさんもらって、それも、口だけじゃないなってわかるんです(笑)。うまくいえないんですけど、私が突撃っていったら、本当に突撃しそうな感じがしたんです。

 だから、私、怖いなって思いまして、怖いというのは私がなんですが、もし私が少しでも野心とか覇気とかのある人間だったら、あの状況を利用したかも知れないのかなって思って、怖いと思いました。自分が本当の自分以上の存在になれるというか、実力以上に人を動かせるかも知れないことを知って、不思議な気持ちでした。そういってくれるのは嬉しいんですけど、プレッシャーでした。

s:

突撃指令は出さなかったんですか?

a:

出さないですよ、出すわけないじゃないですか。私としては、なにもしないでーっていう気持ちの方が強かったんですけど、それじゃなにも動かないから、少しでもたくさんの人にこのことを知ってもらえるように一緒にがんばりましょう、署名もいっぱい集めましょうって、なんかずいぶんいい子ぶってますね(笑)。

 あ、そうだ、これも大変だったことなんだけど、いいかな。

s:

どうぞ。

a:

知ってもらうようにっていうので思い出したんだけど、私、実は最後の方ってお詫びのメールばっかり書いてた記憶があるのね。ほら、普通のサイトの掲示板にこの件についての書き込みをする人が増えてね、それもものすごく増えたみたいでね、いっぱい苦情もらったの。だって、みんな[まとめ]サイトから文章を持っていって、最後に[まとめ]サイトのアドレス(URI)が書いてあるから、苦情が全部私にくるわけ。悪質すぎる、何度消してもまた書き込むって苦情がきて、でも私が書き込んでるわけじゃないから、状況を説明しておわびするしかないんだけど、もう毎日まいにちお詫び文ばっかり書いてました。

 でも、こういうことは本当はいっちゃいけないことなんだろうけど、どうせもうちょっとで終わるんだから、気にせずに書き込んじゃえって思ってた。悪いのは全部私ってことにして、全部謝っておくから、どんどんやれーって思ってました(笑)。

s:

突撃指令ですね。

a:

その時は、表向きは、迷惑になるからやめてくださいっていってたんですよ。でも、この国では内心の自由は認められてるんだから、思うくらいは大丈夫でしょ(笑)。

まとめ

s:

思ったよりも長くなってしまいました。本来なら五六日にわけて公開するような分量です。

a:

いや、駄目ですよ。絶対に4月1日にまとめてあげてくださいよ。そうじゃないと、あとでひどいことになるからね。

s:

わかってますよ。今まで話された内容はすべて嘘ですので。

a:

ええ、全部嘘ですから(笑)。

s:

まとめたいと思います。あの事件を通して、なにか変わったことがあったと思いますか? あったとしたらなにが変わったと思いますか?

a:

正直なところ、私にはよくわからないんです。中にはいりこんで、無我夢中でやって、それが終わって、あれはなんだったんだろうっていう思いもあるんです。けど、あれがきっかけとなって、掲示板やネットを通して連帯して活動するということがどういうことなのか、そういう意義みたいなのが見えてきたりしてたらいいなと思います。結局あの時目立って書き立てられたのは、その頃流行りはじめていたBlogの力みたいなことばかりだったような気がして、本当に私のやったことってなんだったんだろうっていう思いは今もあります。

 最近、PSE(電気用品安全法)についてまたいろいろ動きがありましたが、ああいうのを見てると、私たちのやってたことはかたちを変えながら受け継がれてるのかなとも思います。でも、誰も表に出ないで、顔の見えない状態で、顔の見えない人と戦っている。そういうかたちを確立してしまったのだとしたら責任は感じてしまいます。

s:

顔の出ない状況になにか感じるところがおありのようですね。

a:

ええ、本当なら名前を出して、正々堂々とやったほうがいいのだと思うんです。でも、もしそれで失敗したとしたら、立ち直れないようなダメージを受けてしまうかも知れないから、みんな怖がってやっぱり名前も顔も隠して活動して、でも本当はこういうのは不自然なんじゃないかという気持ちがずっとあるんです。

 でも、それでも私はこうして名前を隠して、だから卑怯だなって自分でも思います。あの時も、名前を出して活動できたらって何度も思ったんですが、それでも恐怖が先にたってできませんでした。あの時、何人か名前を出して活動された方がいらっしゃいましたが、その人たちが本当に勇気のある人たちで、そういう人たちが自分の言葉で物事を伝えられる人なんだと私は思います。

 ちょっと反省文みたいになってしまいました。でも、私はまとめサイトでは本当に自分の言葉では話してなかったと思って反省しています。名前も出さず、顔も出さなかった筆頭が自分だと思うと、今の状況、誰も表に出ようとせずに姑息にやりあうみたいな状況を作ったのは私でもあるのだなと、やっぱり反省します。

s:

思いがけずシリアスになってしまいました。ですが、こうしてインタビューに応じてくださったことを感謝します。

 ありがとうございました。また最後までお読みくださった読者のかたがたにも感謝いたします。ありがとうございました。

a:

4月1日の嘘ですから。

s:

ええ、嘘ですから。

2006年4月1日 エイプリルフール、自宅にて

文責:snowdrop


日々思うことなど 2006年へ トップページに戻る

公開日:2006.04.01
最終更新日:2006.04.01
webmaster@kototone.jp
Creative Commons License
こととねは、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(表示 - 継承 2.1 日本)の下でライセンスされています。