ファン失格

 面白いなと思っている漫画が終わる。地味ながら佳作であると思っていたら終わる。ああ、これからよくなりそうだと思った矢先に終わる。どうも私の好きになった漫画はこういう憂き目にあうことが多くて、これはつまり私の趣味や嗜好が偏っているとでも解釈すべきなのだろうか。しかし、仮に私が偏っているのだとしても、同じようにその漫画が好きだという人の存在は確認されていて、つまり私のような人間はほかにも必ずたくさんいるはずなのだ。なのに、それでも漫画が終わる。悲しい。だが、私にはただ悲しんではいられない事情がある。

 その事情とはなにかというと、私の性質に関わることだ。実は私は声の小さな読者に分類されるような人間で、つまり積極的に働き掛けることが非常に少ない。例えば、読者アンケートを書かない。雑誌を切りたくないという一心からなのだが、結局これが自分の首を絞めている。いや、違うか。自分が好きだといっている漫画家諸氏諸嬢の足を引いている。本当に申し訳ない。申し訳ないと思う。

 アンケートを書かないという負い目があるから、その代わりに手紙を出したりするのだが、これもまた生来の筆無精がたたって、書こうと思った三通に二通、――いや五通に四通くらいを書かずに流してしまう。でも、それでも書くときには書くのだよ。アンケートと違い、有効票としてはカウントされないかも知れない。けれど、それでもこの漫画を読んでいる人間はいるぞと、この作者の漫画を楽しみにしている人間はここにいるぞと、少しでも声を届けたいと思っている。けれど、そんなのじゃちっとも効かないんだろうなあ。

 私は、ものにではなく人につきたいと思っているのだけど、結局雑誌というものを大事にしすぎるあまり、人をないがしろにしている。あの人を支えたいとか口ではいいながらも、できること、やるべきことをやっていない。申し訳ない。私はファンとして失格だ。本当に申し訳ない。


日々思うことなど 2006年へ トップページに戻る

公開日:2006.03.09
最終更新日:2006.03.09
webmaster@kototone.jp
Creative Commons License
こととねは、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(表示 - 継承 2.1 日本)の下でライセンスされています。