古ソフトの行方

 最新とはいわないが、新しいコンピュータを手に入れてよかったと思うのは、多くのソフトウェアが動いてくれることだろう。以前使っていたMacintoshはLC630。ちょうど68kからPowerPCに推移していく頃にリリースされたものだったので、どんどんPowerPCネイティブ化されていくソフトウェア群を見ながら、寂しい思いをしたものだった。ゲームが動かないのはもちろんのこと、一般のアプリケーションからも動かないものがちらほらと出始め、ついに雑誌の付録CD-ROMも68kマシンを切り捨てるにいたって、コンピュータの世界に背を向けてしまったのも懐かしい思い出だ。

 で、新しいコンピュータを使っている今、そのLC630はどうしているかというと、実はまだ現役で働いていたりする。家族の共有マシンとして、古いフリーのゲームをインストールされ、またメール端末として、元気に頑張ってくれている。だが、元気とはいっても限界があるのが実情だ。

 WebブラウザはNetscape Navigator 3.01、最新のブラウザなんて動くはずもない。頼みの綱のiCabも、EUCをエンコードしてくれないので、少々使いにくいというのが実情だ。プロキシを使ってEUCをエンコードすりゃいいとはいっても、使うのはコンピュータに決して詳しいとはいえないうちの家族。プロキシをどうこうするよりも、素直にNetscape Navigatorを使っているほうが、話が早い。

 そんなわけで、LC630は一昔前の環境を保全している、じつにエコロジカルでストイックなマシンになってしまった。

 さて、エコロジカルでストイックといいながら、現実は時間が止まっているだけといった方が正しいわけで、このコンピュータでなにか新しいことをしようとすると、途端に困り果てる事態におちいってしまう。今回の問題は、タブレットの導入が発端となった。

 心優しい友人からタブレットをもらって、これで古コンピュータでもお絵かき環境ができたできたと喜んでいたら、困ったことに肝心の筆圧に対応するソフトがなかった。ネットを探せばもしやとも思ったのだが、あるにはあっても筆圧には反応しなかった。設定のダイアログを開けばフリーズ。おそらくは、68kでは動作しないのだろう。そんなわけで、筆圧対応ソフトを見つけられないいま、タブレットは真価を発揮できないままでいる。

 けれど、LC630が現役だった時分には、68kで動作する筆圧対応ペイントソフトがあったように思う。確かアートスクールダブラーがそうだったはずなのだが、悲しいかな市場にはもはや存在しない。電気街をさまよっても、動作条件がPowerPC搭載機というものばかりで、どれもLC630では走らないのだ。

 中古ソフトを探しても、見つかるのはゲームやマルチメディアタイトルばかり。アプリケーションはさすがに見当たらない。どれほど欲しいと思っても、中古を頼れない以上どうにもできない。こればっかりはお手上げだ。

 発売後、ある一定の期間を過ぎたソフトをフリー/シェアウェアとして流通させるということは不可能なのだろうか。古いマシンを愛用している、あるいは新しいマシンを買えない人は、そういったソフトをきっと欲しているだろうので、きっと需要はあると思うのだが。ネットでダウンロードできる時代なので、流通コストはほぼゼロだろうし、お試し版としての位置づけとしても有用なのではないだろうか。それともやはり、最新バージョンを買ってもらわなければ立ち行かない以上、古ソフトの安価での提供というのは夢物語なのだろうか。

 開発中止されて放棄されたようなソフトもあれば、最新バージョンとは比較にならない低機能のソフトもある。それを、後ろめたくなく入手できる環境があれば、最前線から脱落したソフトでも、長く使い続けられるのに。でも、新しいコンピュータが売れねば困るので、やっぱり無理か。うーん、残念無念。


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公開日:2001.05.16
最終更新日:2001.09.02
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