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こんどこそOS Xにおける文書作成環境(欧文編)

 前回が、欧文文書作成環境と銘打ちながらも欧文入力環境にとどまってしまったので、今回は最初っから欧文文書作成環境の話でとばしていきたいと思います。そもそもOS Xの導入でもっとも嬉しいと感じたことは、多言語環境がぐっと身近に、普通の環境になることだった、というのが今回の大本でした。

 さて多言語環境多言語環境とはいいますが、基本的に僕はヨーロッパに傾いている人間なので、それほど多言語環境の恩恵は受けないんですね。たまに中国サイトを見ようとするときなんかに、文字化けなく、追加のインストールもいらない、便利! というくらいの話です。なのでここでいう多言語環境というのは、実は以前から実現されていた、日本語欧文(それも西ヨーロッパに限られる)混在環境というに過ぎません。でも、こんな限定的なものであっても、OS Xの便利は充分に得られるのでした。

リアルタイムでスペルチェック

 OS X上での欧文文書作成に非常に便利と感じるのは、スペルチェックを、標準のアプリケーションで、リアルタイムで受けられるということです。以前は辞書を引き引き書いたものを、最後にExcaliburに投げて修正するということをしていました。Excaliburというのはフリーにして実に強力なスペルチェッカーでして、愛用のmiには、現在編集中の文書をExcaliburに投げ、結果を受けることができるという機能が標準で搭載されています。Excalibur利用者の多いことをうかがわせてくれますね。

 けれどアプリケーションをまたぐというのはやっぱりちょっと不便なところもありまして、特にある程度編集してからでないとチェックできないというのは、今考えるとやっぱり不便なのですよ。

フランス語にない語彙には赤の下線が引かれる リアルタイムでのスペルチェックの便利は、例えばMicrosoft Wordなんかで体験されている方も多いでしょう。スペルに誤りが出れば、その時点でそれを間違いと知らせてくれるのです。OS Xでは、スペルチェック辞書にない単語を見つけると、赤で下線を引いて知らせてくれます。スペルを間違えたとき、また日本語などのスペルチェック辞書に含まれないもの、それらが対象になります。

 スペルチェックがリアルタイムでなされることで、後でスペルの間違いをなおす一手間がなくなります。そりゃそのつどなおしているのですから当たり前なのですが、意外とこのそのつど後でという手間、違うのです。またスペルチェックをコンピュータに任せることで、書いているときは文章に集中でき、スペルの間違いの確認から意識を自由にできます。これも大きい。特にメールのように、ある程度の手軽さが求められる用途には大きな力になります。

 スペルチェック辞書はもちろん複数用意されていて、僕は当然フランス語にしていますが、普通は英語でしょう。中には英語も書く仏語も書くという人もいますが、そういう人にも対応できるよう、マルチリンガルという選択があるのがよいです。僕は仏単語の間違いを洗い出したいのでフランス語だけにとどめていますが、そのせいで、普段、普通に使う英語の単語とかが下線付きになってて、うっとうしいと思うこともままあるんですけど、これはいってはならないことでしょうね。

用意されているスペルチェック辞書

 用意されているスペルチェック辞書は、以下の十三カ国語です。

 英語が充実してますね。オーストラリア英語、ブリティッシュ、カナダ英語、そして米語。僕ならブリティッシュを選びます(裏道歩きの所以ですね)。

スペルチェック辞書、もう一つの恩恵

途中入力時点でスペル補完を利用できる スペルチェック辞書が搭載されていることでもう一つの恩恵を得ることができます。もう一つの恩恵というのは、途中まで入力した単語を補完してくれるという機能でして、Visual Basic Editorとかで自動補完してくれる機能がありますが、そのようなものと考えていただくと話が早いでしょう(早い?)。

 欧文を入力しているときに、例えば長い単語を打つときなんかがそうなのですが、楽に、間違えずに、確認しながら、確実にスペルを確定させたいと考えることはないでしょうか。そういうとき、OS Xのスペルチェック機能に対応しているアプリケーションでは、Option+Escとすることでスペル候補一覧を呼び出すことができるのです。

 例えばExposéと打ちたいときなんかに、Expoまで打った時点でOption+Escすると、ずらりと長い候補一覧が出てきて、はっきりいって自分で全部打ったほうが速い……、じゃなくて、とても便利です。特にうろ覚えの単語なんかで威力を発揮する機能です。

 けど、間違っても動詞なんかで使う機能ではないですね。だって全活用語尾がアルファベット順(コード順?)に並んで、訳が分からなくなります。なのでご利用は計画的に、程々にという感じの機能ですが、たまには役に立ちますよ。多分。僕はまだ一回も本来的目的で利用したことがないのですが……

 はっきりいって、その言語を母語にしていて、この機能を使ってるような人っているのかなあ。正直、僕にはあまり必要ありません。一覧がずらりと出るのは気持ち良く嬉しくなるものではあるのですが……

アクサン付きアルファベ入力のフィール

 アクサン付きアルファベを打つのに、僕がことえり英字を使っていることは既にいいました。ただÇが打てないのが難儀で、そのためU.S.も併用しているということもいいました。

 さて、U.S.とことえり英字の違いはÇだけにとどまりません。入力時のフィールも少し違っています。

 アクサン付きのアルファベ入力には、アクサン部分を先行入力し、後からアルファベを追加入力するという手順をとります。主にアクサン−テギュやグラーヴ、シルコンフレクス、トレマなんかがそうなのですが、このときにことえり英字では先行入力されるアクサンが表示されないのに対して、U.S.ではそれらがきっちり目に見えるかたちで示されるのです。

 百聞は一見に如かず、以下をごらんください。フォントサイズは拡大してますよ。

アクセント記号付きアルファベット入力時の挙動

Exposォ
アクセント記号を先行入力すると、黄色く強調表示されたアクセントが表示される
Exposé
アルファベットを追加入力することで確定、強調表示は消える

 このあたりはそれほど重要になりそうな機能ではないですし、僕自身特に重視するものではありませんので、見逃してもなんら問題にならないところだと思います。実際僕は普段ことえり英字を使ってるわけでして、なおさらこの表示は見ていないわけでして……

多国語に対応するMail

 OS Xでのメーラーは、これまで長く使ってきたPostinoを捨て、OS標準のMail.appにしたという話もすでにしました。その理由というのはPostinoが開発中止されたためですが、突き詰めていえば、開発中止されたPostinoがiso-8859-1(Latin 1エンコード)に対応することは未来永劫ないからということでもあります。これは意外に大きな理由だったといえるでしょう。

 OS 9でフランス語圏(フランスやカナダ)とメールやりとりするときは、メインのPostinoではなくEudoraを使っていました。用途によりメーラーを分けなければならず、しかしそれなのに突然来るメールへの対処はPostinoでする、つまりメールの管理と送信でアプリケーションが違っていて、これが思いのほか手間でした。この手間のために頻繁なメールのやりとりは行われず、特に普段の日本語でも返答が遅れぎみの駄目な奴が僕です、返事はなおさら遅れてしまいます。でもそれでは駄目なのです。分かってるのですが、それでも駄目なんです

 だもんだから、少しでもメールが送りやすくなるよう、なんとしてでも、手軽にメールのやりとりをできる環境を手に入れたいのは当然じゃないですか。そんなわけで、必要充分で各言語へのメール送信、ユニコードにも対応するMail.appは非常に自然な選択だったのです。

 Mail.appのエディタは、リアルタイムでのスペルチェックに当然対応しています。なので、今までいっていたことのメリットというのは、ほぼフランス語を用いたメールやりとりに集約されるといっていいでしょう。

今回のまとめ

 スペルチェックに代表される機能のおかげでずいぶんフランス語を書くのが便利になりました。とにかく、スペルの確認を辞書でしなくても済むのは大きい。楽に書けるようになりましたし、辞書は表現を確認するものになりました。いうなら、今まで自分でやってた機能をコンピュータが肩代わりしてくれるようになったのです。

 Macintoshにおいて欧文を使うというのは、もとが1バイト言語圏を中心に発達してきたコンピュータであるから当然なのでしょうが、実に自然に普通に入力し、表示し、印刷することができました。OS Xでは欧文に加え多数の言語にOSレベルで対応しました。特別の設定をしなくても(これが大事!)多くの言語に触れ、入力し、表示し、やりとりすることができます。このやりとりできるというのがとにかく重要です。今まではやりとりまでに追加のステップがありました。OS Xの導入でそれが無くなりました。

 コンピュータというのは、特にインターネット時代に入ってからのコンピュータというのは、情報処理の道具である前に、コミュニケーションの道具といった色合いが強くなって、これからもその傾向は加速されるでしょう。主に文字、テキストを用いて情報がかわされるネットでは、どのような文字、言語であっても嫌わず受け入れられることが理想で、いわばその欲しくてたまらなかった環境土壌が、iBook G4のおかげで自然になった。そういっても決していいすぎではありません。

 フランス語、イタリア語、ドイツ語等西ヨーロッパ言語はいうにおよばず、中国にハングルといったアジア文化圏を普通に往来することができます。アラブだって平気です。突然やって来るメールを、人間が読む読めないではなく、機械が処理するという時点で読めないということがなくなり、その気になれば返事を返すことだってできます。サイトが表示され、メールを書くことができる。この、至極普通に思えることは、思ったよりも多文化に親しむのを楽にしました。本人の努力次第ではありますが、昔ならよっぽどの努力が必要だったことを、コンピュータがいくらか肩代わりしてくれるので、比べるのも可笑しいくらい楽になったのです。

 新たなコミュニケーションの可能性を得ることができたのだと、少し世間に遅れて実感したのでした。可能性こそは大きくあって欲しいと願います。ゆえにiBook G4は僕に少しの可能性をくれたのだと思います。


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公開日:2003.12.11
最終更新日:2003.12.14
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