架空請求の間抜けな手口

 私は一日あたり三百通ほどのSPAMを受け取っています。Mail.appの迷惑メールフィルタをすり抜けるものも増加の一途をたどって、もうメールシステムは破綻しているといっていいような有り様です。あんまりにも煩わしいのでサブジェクトと差出人だけで判断してSPAMかどうかを判断して捨てているのですが、こうなるといつ必要なメールまで捨ててしまわないとも限らない。というか実際捨ててますから。本当、メールという通信手段はもう駄目です。

あるSPAM

 さて、本来なら本文を見るようなことはないSPAMですが、先日たまたまひらいたものにどうにも気になるURIが記載されたものがありまして、それどういうものかといいますと、GETメソッドのパラメータ(URIの末尾、?以降に記載されてる文字列)に私の使ってるメールアドレスがそのまんま書かれていましてね、わお、なんというわかりやすいビーコン! これ、このリンク文字列をクリックしたら、そのアドレスは生きているうえにSPAMにも反応しますよということをSPAMerに通知しちゃうと、そういう仕組みであります。

 しかし、ランダム生成の文字列やなんかならともかく、メールアドレスそのまんまってどうでしょう。あんまりにも適当というか、あんまりにもいいかげんというか。こんなずさんな罠しかけるたぁ、一体どんな奴らだろうと、ここで悪い興味が涌いてきたわけです。というわけで、サイトを見にいってきました。

 といってもパラメータ付きのURIそのままでアクセスしたら私がアクセスしたとばれてしまいますから、Getパラメータはばっさり全削除。Getパラメータがないと表示されないんじゃないかな、とも思ったのですが、ここはさすがに親切ですね、問題なく開くことができました。

 開いたサイトはいわゆるアダルトコンテンツ、有り体にいうとエロですね。最初に入室うんぬんに関する注意書きがあって、エンターをクリックしてメニューページに進むというスタイル。さてソースはどうなってるんだろうと思って確認したところフレーム使ってますね。なので、フレームの内容を表示させてソースを見ると、入室のリンクというのはJavaScriptのNextPage()関数をコールするハンドラであります。でまあ進んでみたところ写真が数枚表示されまして、それら写真がまたNextPage()関数をコールするハンドラになってる。で、そいつをクリックしてやると、突然新規のウィンドウが開かれてダウンロード画面が表示されるじゃないですか。しかもこちらの操作を受け付けずダウンロード先が勝手に選択されるインストールまでされてしまうはの乱暴狼藉。

 もう、大笑いでした!

 なんで、Mac OS X使ってるのに、Safariでアクセスしてるというのに、ダウンロード画面がWindowsのIEやねん。正直いってあり得ない。ムービーですよ、ムービー。JavaScriptで開かれたウィンドウ内にダウンロードやらインストールやらのムービーを流してるんですよ。で、それらが完了するとメインのウィンドウに、契約完了しましたとか表示しましてね、請求はがきの画像やら請求金額九万いくらという文字やらが大書されて、つまりここでGetパラメータに含まれていたメールアドレスが必要になるんですよ。きっとメール送るんでしょう。契約完了したんだから、サイトの使用料を払ってくれとかいってくるんでしょう。でも、これはあんまりにも駄目すぎるわ。だって適当に収集したアドレスにSPAM送って、引っかかってきたどこのなにとも知れないアドレスに請求送るって、いくらなんでもいいかげんです。契約だとか請求だとかいうなら、もうちょっと確実性のある情報がないと真実味がないわけで、だからちょっとこれでは引っかからないなあと思ったのでした。

一抹の危惧

 でした――が、これ、コンピュータというかインターネットというか、いろいろに詳しくない人だったらびびってしまったりするんでしょうね。正直、画面があれよあれよと変わっていくので、慣れてない人だったら訳もわからないうちに契約完了とかいわれて、パニックになってしまうかも知れません。で、後日メールが届いて、どうせそこには職場に押し掛けるだの強迫めいたことが書かれるのだと思いますが、それでいわれるままに払ってしまうというようなケースもあるのかも知れません。

 そう考えると、ああいう詐欺犯罪の類いというのは罪深いなと思います。こういうのに引っかからないために知識はつけたほうがいいとは思いますが、けれど人によっては厳しいでしょう。例えば私の親の世代なんてなると、詐欺やなんかについてはわかるとしても、こうしたコンピュータのうんぬんはわからないだろうと思うわけで、そんな人が架空請求サイトにアクセスし架空請求メールを受け取ったりしたら一体どう思うだろうかと思うと、さすがに心配になってくるというものです。

 正直、ああいう不逞の輩、なんとかならんもんでしょうか。こうした連中がネットに跋扈していると思うと、ここは老若男女善男善女の往来してよいような場所とは思えなくなります。


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公開日:2006.12.18
最終更新日:2006.12.18
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