楽譜が電子のなにかになるなら

 AR技術とやらが、理想的な電子楽譜を実現してくれるかも知れない。そうした夢を描いて、ではもしこれが実現するなら、どんなものになって欲しいのか。少し考えてみたのだった。

 とりあえず、現行の楽譜が持っている要素は残して欲しい。紙の楽譜のよいところは、書き込みが自在であるところ。切り貼りができるところだろうか。書き込みに関しては、現在の電子文書のデファクトスタンダードといえるPDFでも可能だから、まあできるようになるのが当然と思うんだが、だったらどういう風に書き込めるといいかといえば、まずフリーハンドで手書きできることが重要。色も選べるといい。楽譜よりも書き込みを目立たせたいときもあるが、その逆もある。大きな文字で書いておきたいこともある。

 書き込みはフリーハンドで。加えて、音符の書き込みもできて欲しい。あと、もとにある情報を上書きできるようにもして欲しい。これは改竄したいというわけではなく、状況によって、別パートのフレーズをやらねばならんこともある。これを手書きで書いては読みにくい。だったら、楽譜、音符そのものを書けたほうがいいだろうさ。それこそ、切り貼りできる、挿入したり上に重ねたりできないと困るなと思う所以はここにある。

 書き込みは、複数の版を保持できるとありがたい。自分ひとりでやっている時と、誰かとやっている時。また、演奏する状況によって、書き込まれる指示は変わる。そのたびに、消して書き直すのではなく、切り替えできると便利だろう。また、ベースとなる書き込みがあって、時々に変わる演奏時の注意事項があって、そうしたものをレイヤー重ねるようにできるといい。

 現行の楽譜がそうであるように、レイアウトそのものを保持して欲しい。MIDIのようなデータを読んで、楽譜として表示するというのはちと困る。演奏は楽譜の見た目にかなり左右されるところがあるために、ただデータを読んで楽譜として出力したというような楽譜は使いづらくてしかたがない。速い音型が間延びしていると、ぱっと見で速い音型と意識されない。それは逆も同様で、そうしたぱっと見の印象でさえフレーズの特徴を伝えるのが楽譜であるのだから、レイアウトの保持は絶対に必要だ。けれど、酷い楽譜が出てきたときに、レイアウトを変更できるようになってないとこれもまた困る。

 移調が簡単にできるといいなと思う。その際には、五線譜は原調のまま、コードネームだけ移調するなどできるといい。絶対音を持っている人間には正気の沙汰ではないかも知らんが、そんなもの持ってない私にはこっちの方が都合のいいことがある。カポ使う時なんかもそうだな。なんにせよ、融通のきくことが重要だ。

 メトロノームやドンカマと同期して自動スクロールしてもいいと思うが、自分はちょっと嫌かもな。譜めくりは、フットスイッチなんかでやりたい。戻れるとなおいい。けれど、基本は進むばかりで、その進み方、ページ順を事前に指定できるようになっているといい。楽譜のとおりに演奏しない場合があるからだ。繰り返しをとばすなど普通にある。こうした進み方に融通がきかせられないと、楽譜の使い勝手は悪くなる。

 AR技術とやらで、視界に楽譜を投影するなら、ぜひ透明度は指定できるようになって欲しい。楽譜はかじりついて見るようなものじゃない。ステージで演奏するときは、ほとんど覚えてしまっているものだ。楽譜なんてものは、もしもの時の覚書に過ぎない。だから、視界を邪魔しない程度に、けれどちゃんと読める程度に表示されているのがよい。

 他にはなにがあるだろうか。歌詞の表示、2番にはいれば、1番は消して欲しいかも知れない。段を間違えて歌ってしまうなんて日常茶飯事だ。繰り返しの2度目には音型が変わるなどあれば、重ねて書くのではなく、ちゃんと表示を切り替えて欲しい。ただし、重ねておいて欲しい場合もあるから、選べると嬉しい。

 とりあえず現時点ではこんな感じだ。実際これが実現すれば、かなり面白くなるな。AR技術が、日常に普通に使われるほどに普及すれば、こうしたものも出てくるかも知れない。その際には徹底的に使いやすいものになっていてくれればよいと願うばかりだ。


こととねギターサイドへ トップページに戻る

公開日:2009.10.24
最終更新日:2009.10.24
webmaster@kototone.jp
Creative Commons License
こととねは、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(表示 - 継承 2.1 日本)の下でライセンスされています。