加藤和彦氏死去

 訃報なんてものは、いつだって突然だけれど、それにしても突然すぎた。

 家人の見ていたテレビのニュースで、加藤和彦氏死去のニュースをやっていた。言葉もなかった。いったいなぜという思いに、空虚さばかりが際立って、ああつらい、そう思った。

 ザ・フォーク・クルセダーズの加藤和彦。サディスティック・ミカ・バンドの加藤和彦。けれど、それだけではない。自分のライブラリを、加藤和彦をキーに軽く検索してみたところ、そうか、『白い色は恋人の色』もこの人だったのか。意識しないで聴いてきた、そんな曲にもこの人の手の跡が残っている。作曲がそう、あるいはプロデュースが加藤和彦かも知れない。実際、検索して出てきた十数曲以外にも、この人の関わったものはあるのだろう。

 私がギターをはじめたころ、働いていた図書館で見付けた本の中にNHKの趣味講座のテキストがあって、弾いてみたかった『22才の別れ』が載っていたものだから、借りてきて、それを頼りに練習して、なんとなくでも通しで弾いて歌えるようになって、そのテキストが『アコースティックギター入門』。石川鷹彦と加藤和彦が講師だった。このテキストは本当によくできていたものだから、ネットで探して、オークションで入手した。気のきいた選曲が魅力で、また読み物としても面白い。手元に置けて本当によかった。そう思える一冊だ。

 フラットトップギターを弾く人、フォーク系の人なら、なおさら加藤和彦は身近な存在だったのではないかと思う。意識して探しているわけでもないのに、普通に情報がはいってくる。雑誌を見れば、この人がしゃべっている。テレビを見れば、この人が歌っている。ライブラリを見れば、この人の歌がみつかる。好きで口ずさんでいた歌に、この人の手跡を認める。

 ああ、悲しい。悲しい。悲しい。悲しさに、胸がつぶれそうだ。けれど本当の悲しさ、辛さは、これからだろう。ああ、人生は、世の中は、こうもつらいものか。失うということは、こうも悲しいものか。いつだって思う。いつだって思う。今回もそうだった。今回もつらさが胸に充満して苦しい。息もつけないほどに苦しい。


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公開日:2009.10.17
最終更新日:2009.10.17
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