やっちまったよ、ああ、トップをやっちまった。昨日のことさ、油断したのさ。スタンドからほいっとギターを取り上げたんだが、そうしたらあり得ない音と衝撃が。その時私はマイクを立てて、譜面台やらなにやらを、いつもとは違うレイアウトに置いていた。いつもならないところにある譜面台でやったのさ。よりによってトップをさ、ちょいと傷つけてしまったっていうわけさ。
まあ、ちょいと見てくんねえ。
ほら、傷があるだろう。え? わかんない? いや、写真の真ん中あたりをじっくりと見てみてくだせえよ。光の加減じゃないのかって? いや、そんなこたあない。あの時、確かに欠けたラッカーの破片が落ちるのをこの目で見たんだ。
以前私はプレイヤーコンディションを目指すといっていたが、それでも楽器を乱暴に扱いたくはなかった。にもかかわらずこれだよ。これ、意識して楽器を扱っていたら、絶対に付かない類いの傷だ。それを付けてしまったのは実際ショックで、この時私は仲間内でマイク越しに歌っていたんだが、あまりのことにショックをショックと口にしてしまった。
買い取り査定が下がると、売る気もないのに冗談めかしていったらさ、嬉しいことをいってくれる人がいて、グレートなシンガーになったらいいんだよと。その傷そのものが楽器の価値になるような、そういう風になればいいんだよと。いや、嬉しいね。実際プロの楽器は傷だらけ。乱暴に扱ってるわけではないだろうけど、使うというのはやっぱりそういうものなのさ。綺麗さばかりにこだわって、大事ななにかを忘れちゃならんなと、そんな気分になったのさ。
というわけで、楽器はだんだん傷んでいく。いつかリペア、というか調整に出すつもりでいるから、そん時になおるものならなおしてもらって、できるだけ大事に、けれど必要以上に過保護にするのではなく、そんな感じでつきあっていきたいもんだ。