楽器の練習というのはたゆまぬ反復練習に他ならず、毎日毎日同じようなスケール、同じようなアルペジオを、何度も何度も繰り返す。そういう退屈さに耐えられる素養がなければ、そもそも器楽奏者というものは大成しないのである。
とかいうけど、私は全然この反復が苦にならないんだけどね。おんなじフレーズを、ちゃんと弾けるまで何時間でも弾いていられる。そりゃうまくいかないと腐りもするけど、練習すればなんとかなるもんだからね。だから、何時間でも、何日でも飽きずにやるよ。でも、だからといって大成するわけでもないのが器楽奏者というものだから、やっぱり難しいってことだね。
カポタストは、ネックに装着することで、ギターのキーを変化させる小道具で、これを使えば移調が非常に簡単になる。これはピアノや管楽器では得られない、弦楽器特有のアドバンテージといっていいだろう。in Cで低く感じる。キーを1音あげたいなあと思ったら、なにはなくとも第2ポジションにカポをはめればいい。この状態で弾けば、in Dになっているというわけだな。まあ、逆にキーを下げるのはそれほど簡単ではないんだけどね。
さて、そのカポの持つアドバンテージを練習でも活用してみようというわけだ。
原因理由はよくわからんのだが、人間には調性感というのがあって、調を変えることでがらりと曲の雰囲気が違って感じられるのだ。一般的にシャープ系の曲になれば明るく華やかになり、フラット系だと落ち着いて感じられる。なんでかわからんがそういうことになっている。
この調性が変わることで雰囲気が変わるという効果を練習にも持ち込んでやればいい。
アルペジオの練習などで、延々同じ練習曲を繰り返しているとき、もういいかげんうんざりだなあと思いはじめたとき、だまされたと思ってカポを第1ポジションにでも着けてみよう。調が半音上がることによって、今まで散々弾いて飽きてしまっていたはずの練習曲が、まったく違った表情をもって現れてくる。その変化の鮮やかさに驚いて、いつもできていたところで間違ってしまうくらいだ。いつもはなにも考えずに弾けていたようなところも、どういう風に弾いていたかいちいち考えてやらないと弾けなくなったりもする。また逆に、今までどうにもうまく弾けなかったところが、思いがけずすらすら弾けてしまったりもする。
カポをはめるだけで、気分をリフレッシュさせ、いいかげんに弾いていた気持ちを再度引き締めることができるというわけだ。
カポをはめるポジションを上げていくと、フレットの感覚は狭くなっていく。このため、今まで指をうんと開かないと弾けなかったところも、比較的簡単に弾けてしまったりする。こうして練習して弾ける感覚を覚えたら、カポのポジションを下げてやる。この繰り返しで、どうしてもうまくいかなくっていらいらしていたところも克服できるかも知れない。
こんな風に、カポを使うだけで乗り越えられる部分もあるかも知れない。ぜひ、皆さんも練習時にカポを活用して欲しいものだと思う。
しかし、カポの効用の最大のものは、今まで気付かなかった曲の違った側面が明らかになることだと思う。思い掛けない魅力や、思いもつかなかった表現に気付くかも知れない。これはなかなか馬鹿にできないことだと思うんだよ。