結局剥がした

 伝統邦楽の絃楽器奏者は、指先にできる水膨れを、音がかたくならないようにとっとと剥がしてしまうという話をして、そんな無茶なといったのはほかならぬ私だ。だが、やっぱり伝統というのはたいしたものだと思う。角質はできるだけ早く除去してやるほうがよさそうだ。

水泡のその後

 年末年始の時間の余裕をいかして、毎日毎日ギターを弾いたおかげでできた右手薬指の水泡。それを私は温存して、自然に柔らかくなるのを待とうと思っていたのだが、この考え方は間違っている。伝統芸能社会での知識は、過去から連綿とつながる経験に基づく部分もあるのだろう。こういう余剰の角質は早めに取ってしまうにかぎると、考え方をあらためた。

 毎日長時間弾いていた間は、弦を弾く力で毎日皮膚が剥がされていたものだから、かたくなる暇がなかった。だから痛み以外に問題もなかったのだが、ギターを弾く時間がへればたちまち指先はかたくかたく固まってしまった。色も黄色くなって、机を指先で叩くとこつこつ音がする。それくらいになってしまっていた。

 こうなると、演奏に非常に邪魔になる。指先がかたいものだから弦をうまくとらえることができず弾き損じることが多くなるし、弦をうまくとらえたとしてもまた問題がある。弦をはじかなければならないのに、かたい部分が引っ掛かりになって、弾ききれず指が止まってしまったりするんだ。薬指の筋力が弱いのも悪いのだが、これは本当にストレスになった。うまく弾けないことをストレスに思っても仕方がないのだが、気にするなというのも無理である。やすりで削ったりしても埒が明かず、いらいらばっかりが募る。

 だもんだから、精神衛生上の問題も手伝って、風呂につかってそこそこ柔らかくなったところで、角質を除去してしまった。

剥がして後

 古い皮膚の下には新しい皮膚がもう張っていたから、演奏上の問題は皆無である。多少周りの皮膚と剥がしたところに段差があって引っ掛かりもするのだが、これまでのことを思えばまったく問題にならない。なんでもっと早く剥がしちまわなかったのだろうと、次からはとっとと剥がしてしまおうと決めてしまった。

 確かに真皮が出れば痛いだろうが、まめ越しに弾こうと直接弾こうと、どっちも痛いには変わりないんだし、剥がせば指も慌てて新しい皮膚を張るだろうよ。

 なので、多分もう指先に水疱を作るようなことはないだろうが、もし次に水泡ができたときはきっとすぐさま剥がしてしまうのである。いや、こんなことをいってるのは、その苦痛を味わう可能性がないと思ってるからかも知れないな。

 なので次の機会が現れることを請うご期待だ。


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公開日:2004.01.21
最終更新日:2004.01.21
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