卒業論文要旨

『サクソフォン演奏技法の変遷』

 サクソフォンは、アドルフ・サックスにより1840年前後に発明された楽器である。サックスは、木管楽器と金管楽器の中間の性質を持ち、音質が統一された管楽器としてサクソフォンを発明した。当初は、サックスの意図どおりに使用され、あるいはもの珍しい特殊楽器として用いられたサクソフォンであるが、20世紀初頭から中期にかけて現われた新しいジャズでの需要や、芸術音楽における近代サクソフォン奏法の確立により、重要なソロ楽器としての地位を確立した。

 管楽器における特殊技法が現れ始めたのは1930年頃からである。当時の進歩的な作曲家が音色や、楽音以外の音素材に着目したことと関係している。通常用いない奏法によって新しい音響を得る試みが、多くなされたのである。サクソフォンにおいても同様であり、その音色探求の結果は、フラッタータンギングや様々な種類のヴィブラートの使用、四分音のための奏法、音域による音色のコントラスト、様々なアタック、を産み出し、さらには打鍵音や打孔音、息音や発音中の発声など、非楽音や騒音までを音素材とするに至った。

 一般的に現代作品が多いという印象のあるサクソフォンであるが、意外にも前衛作曲家はサクソフォンを用いてはおらず、サクソフォンのための作品――特に現代音楽のジャンル――は数少ない。だが現在では、サクソフォンの、他のリード楽器に比しての、発音可能な音色の多彩さ、ダイナミックスの幅、音色を変化させることのできる余地の広さ、合理的なキーメカニズムの持つ機能性、そして様々な効果を得ることが比較的簡便である、という特性が、現代作曲家によって注目されている。しかし、そうであるとはいえ、まだこれらの特殊技法は多くの奏者にとって演奏困難であり、このことはサクソフォンの特殊技法が普遍化するための障害となっている。


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公開日:2000.08.15
最終更新日:2001.09.02
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