ロッタちゃんと赤いじてんしゃ

こんな時代もあったよね

原題:LOTTA PA BRAKMAKARGATAN
1992年/スウェーデン/1時間18分

監督:ヨハンナ・ハルド
原作:アストリッド・リンドグレーン
発売:アスミック(DVD)


 ロッタちゃんです。お父さん、お母さん、お兄さん、お姉さんとの五人家族で、ぶたくまのバムセも一緒に、ピクニックに行ったり誕生日に自転車を欲しがったりして、おじいちゃん、おばあちゃんのうちに遊びに行っても、ごねたりすねたりして、うちに帰るだなんて言い出して、みんなを困らせたりして、でも僕もこういう利かん気でした。

 この映画の中にあるのは、たぶんたいていの子どもが歩んできた道なんだと思います。小さい子あつかいされるのを嫌がって、大人やお兄さん、お姉さんの真似をしたりする。誰もがきっとこういう時代を持っていたはず。はたで見てるとほほ笑ましくて、でも親だったりした日には腹が立って仕方がないようなロッタちゃんの所業の数々は、とても自然でどこにでもありそうな子どもの姿で、ただただその描かれ方の確かさが、この映画を美しいものとしてるのではないでしょうか。

 キャンプに行って川にはまる。自分の大事なものなのに、別のものに気を取られてしまってなくしたりする。魚が食べられなくて、遊んではしゃぎすぎてついには怒られる。

 その、どこの誰にでも起こりえたことだからこそ、ああ自分もああだったんだとロッタちゃんに共感し、遠い国の異なる文化の子どもの出来事を、自分に起こったことを透して身近に感じられるのでしょう。

 この映画を見ている間、昔の自分を、少々照れて恥じらいながらも思い返すことのできる貴重な時間を持つことができるでしょう。国や文化こそ違えど、みんなきっとこうだったんだという、子ども時代の普遍性が染み入ります。

 だからこそ、この映画はひとりで見るんじゃなくて、出来れば家族と、親や兄弟、これから家族になりそうな人と見て、みんなこうして大きくなったと思い返すのが嬉しいことになります。思い出に淋しい人は、ロッタちゃんを見て新しい思い出をきっと作って下さい。そういう未来を夢見て欲しいと、思える素敵な映画です。


評点:3+


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公開日:2000.11.30
最終更新日:2001.08.29
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