八月十八日の京都見物

京都見て歩き

 ちょっとお遣い物を探しに京都に出てみたのでした。しかも私には珍しく京極付近。京都には新京極というちょっと繁華な通りがあって、気の利いたなにかがあればいいなと期待して繰り出したのです。

 本日の行程は次のとおりです:烏丸→新京極→三条通り→寺町京極→錦小路→河原町

 一応目当ては決めてあって、けれどそれよりもいいなと思うようなものがあればそれに変更しようという、私にとってはちょっとした冒険、開拓といえる散策でありました。

新京極へのアクセスは

 新京極へのアクセスは、阪急烏丸駅が便利です、というか烏丸と河原町のちょうど中間くらいにあるから、どっちからいってもいいような気がするんですが。いや、河原町駅の方が近い? よくわかりませんが、今回は烏丸からいきました。

 阪急烏丸駅は地下に潜っていて、写真にしてみると結構ふるい感じがしますが、実際にいってみてもふるさは否めないですね。子供の頃からこのへんはちょくちょくきていたので、私には馴染みの場所といった感じです。

 目的地は河原町と烏丸の間ということですが、河原町ゆきなら先頭車両に乗車するのが便利です。ホームの端に階段があって、昇るとそこには改札が。改札出れば、左手に大丸京都店の地下入口があり、そしてまっすぐに地下道が通っています。特に街並みをみたいということでもなければ、地下を通っていくのがいいんじゃないかと思います。

Underground passage
改札を出たところ
Daimaru entrance
大丸入り口

 目指すは9番出口です。しかし、これが結構遠いんです。歩いて歩いて歩いて、この地下道、左右に店があるわけでもありませんから、実に楽しくないのですが、それを押して歩いて、ちょっと寂しさがなくなったかなという頃、左手に9番出口が出現します。あがるとそこが新京極の入り口です。

Underground passage
ちょっと華やかになってしばらくしたら、
Way out, no. 9
9番出口を発見
Explanation of Shin-Kyogoku Street
階段のぼると、そこが新京極

今回のミッション

 今回の京都行はお遣い物探すためだといっていました。しかしそれでなんで新京極なのだろう、というと理由があったのでした。その説明になるかどうかわかりませんが、ヒントとして写真を一枚:

 夏に外で会う人になにか差し上げるというのはいいとして、問題はそのものです。夏、とにかく暑い日が続きますが、こんなときに食品というのはちょっと危険すぎます。保存の利くものだったらいいけど、足の速いものだったら最悪。まあそれ以前の問題として好き嫌いとかありますよね。好き嫌いならともかくアレルギーとかもあるわけで、食品というのは本当に危険なんです。だから食品でない、日もちするものというのが求められました。

 そしてもう一点。かさばらないことも重要です。先ほどもいいましたが外で会うのです、つうことは、荷物になるようなものはまずいのです。あまりかさばらないもの、ぎゅうぎゅうに突っ込まれたとしても壊れないようなもの。それを考えると、よーじやくらいしか思いつかなかったのです。

 よーじやっていうのは、京都の老舗の化粧雑貨扱うお店です。あの独特の手鏡に女性の顔あしらった意匠が印象的ですが、私、この店、どこにでもあるもんだと思ってたんですが、基本的に京都にしかないんですね。羽田、成田、関空あたりにもあるそうですが、日頃ちょいっといくような場所でなく、けど私は普通に京都に出ては、その店のたたずまい見てたから、意外。そうかあ、京都以外ではちょっとした珍しいお店であるのかあ。

 けれど、化粧雑貨も難しいんだそうで、石鹸とかは肌との相性があるし、よーじやといえばあぶらとり紙、そもそも使わないって人もいます。だから、よーじやは最後の最後の砦として、まずは京都市内ぶらりと見て回って、こりゃいいやというのを探してみようと思った。最終決戦地はよーじや、とくれば本店のある新京極が便利でしょう。そういう経緯で、新京極散策が決定されたのでした。

 余談だけど、実は私、祇園店がよーじやの本店だとずっと思い込んでいました。本店が新京極と知らなければ、きっと祇園界隈、河原町通を散策したことと思われます。

阪本漢方堂

 子供の頃、新京極というとこれという店がふたつほどありまして、そのひとつが阪本漢方堂でした。

 この数年、新京極どころか京都にいくことさえ少なくなってしまって、そんな中、私のかつて好きだったもの、私が京都らしさを感じていたようなものは徐々に消えていって、たまに京都に出ると、なんだか寂しいななんて思うこともしばしば。街が移り行くことは仕方がないと諒解しながら、それでも変わるということは一抹の寂しさがあるものだと思います。

 ところが、私がもっとも新京極を感じる店舗である阪本漢方堂は健在でありました。この店、阪急の地下から上がったところ、まさにその階段の隣にどっかりと構えていまして、特徴的なのはその看板。いかにもな薬師が鎮座ましましていて、このインパクトは子供だった私にも強烈に作用してましたよ。本当、これを見れば新京極にきたという気持ちになれて、家へ帰ろうという寂しさをともにこの看板を再び見上げて。新京極行の始まりと終わりを飾るにふさわしい風格だと思うのです。

 けど、私、この薬屋で買い物したことないんですよね。だから、この看板以上には語ることができなくて申し訳ないんですが、けれど京都周辺には、この看板に覚えありという人、きっと多いんじゃないかと思います。

ロンドンヤ

 そしてもうひとつが、これも有名ロンドンヤです。ロンドンヤといっても、すぐにはピンとこないと思いますが、簡単にいいますとお菓子屋さんです。ロンドン焼と呼ばれる、かすてら饅頭だそうですね、焼き菓子を店頭で作り、そして売るという店なのですが、なんといってもこの店の知名度を上げているのは、その菓子作りの工程でありましょう。

 というわけで、ちょっと写真:

 店の前面がガラス張りになっていて、ロンドン焼がどんどんとできていく様を見ることができるのですが、これが実に楽しいんです。回転する鉄板に、セルクルがつぎつぎセットされていったと思えば、生地が入り、白あんが入り、片面焼けたらひっくり返して、焼き印まで捺してしまう。これがもう見ていて飽きない。子供なんかがショーウィンドウに貼り付いて見てる。もちろん、私も子供の頃には貼り付いて飽きず眺めていたものですよ。そしてお土産にロンドン焼を買って帰るというのは、もはや新京極に出たときのパターンでした。

 そんなわけで、年甲斐もなくショーウィンドウに貼り付いてきましたよ:

 しかもお土産に買ってきました:

 見て楽しく、食べて美味しい。ソフトな生地に、なめらかな白あんがマッチして、お土産にもいいし、自分のおやつにももちろん最高です。買うときには、箱入りと簡素な紙包みを選べるのが嬉しいところ。私は、紙包みの方が好きですが、お遣い物なら紙箱かなあ。紙包みも逆におしゃれだと思うのですけどね。

京極井和井

 京極井和井は和物工芸の専門店。店のたたずまいも和を感じさせるこの店は、手拭いや扇子、櫛、かんざしといった伝統品をはじめ、布製ブックカバー、お香、バスグッズなども扱って、実に多種多様な商品が目にも楽しげでありました。

Round fan 私が足を止めたのは、表に小さな団扇が並べられているのに気付いて。伝統的な和柄があれば、ちょっとモダンなものもあって、面白そうかもと思ったのでした。店の中うかがえば他にもいろいろありそうな感じです。いかにもお土産という感じでもない。それこそ京都に住んでいる人間が、普通に立ち寄って買い物して、日常身の回りのものを揃えたりできそうな店だという雰囲気がいいと思いました。さりげなくて、気の利いていて、そしてどこにでもあるわけじゃないってそういう感じがよかったのだと思います。

 今回の散策に備え、友人にアドバイスを貰ったりもしたんです。お遣い物を買いにいく、よーじやなんかどうかなあって。そうしたら、和の小物なんてどうかなと。手ぬぐい、風呂敷、ブックカバーあたりがいいかもよというご意見いただきましてね、加えて、私ならアロマやお香、入浴剤なんかを贈ることが多いわという意見もいただきましてね、そういう観点からしたら、このお店はベストでしょう。手拭いある、風呂敷ある、ブックカバーもあるわけで、さらにはお香もバスグッズもある。おー、これはいいお店。中にずかずか進んでみれば、簡単な着物なんかもおいてます。しかも割りと安いの。私は着物なんて普段着ないけど、ちょっと欲しいなと思ってしまった。そう思わせるような雰囲気のある店だと思います。

ブックカバー

 迷ったのはブックカバーだったんですね。

 布製のブックカバーならしっかりしてるし、手触りも悪くないでしょう? よさそうかなと思ったんですが、ブックカバーだけ贈るというのもちょっとなと思って、つまりは中身も欲しいってわけで、そうなると難しい。本を二冊ほど、布のブックカバーかけましてね、しかもそれを風呂敷で文庫包みしたりして贈る。ハイセンス? それともやり過ぎ? 私は今の時点ではやりすぎかと思いました。もうちょっと親しかったりしたら違うのかもね。けど、今は手を出せないと思った、ちょっと取り合わせが難しいと思いました。

 けど、もし鳥の柄があったりしたら危なかったと思うんだ。パンダ柄は、好きな人にはたまらないだろうと思います。

お香、それからバスソルト

 センスの問題あるいは距離感の問題で選ぶに選びにくかったブックカバーですが、場合によってはそれ以上に難しいのがお香、バスソルトなのではないかと思います。お香、好きな人にはきっとたまらない感じのギフトになると思うんですが、それでも好きな香り、嫌いな香りというのがあるでしょう。また、それ以前の問題として、匂いの強いのがそもそも苦手という人もあれば、煙が苦手という人もいるわけで、これも充分にリサーチしてからでないと選ぶに選べない、難しいものであると思います。

 たいして、バスソルトならもう少し難度が下がるかなという印象です。

 このお店ではバスグッズの類いも充実させていまして、バスソルト(入浴剤)があればバスオイルもあって、これらを選ぶのは確かにちょっと楽しそうでありました。ただ、今回のような場合だと、バスソルトが妥当かと思います。バスオイルは便入りで、持ち運びにちょっと難あり、割れても困るし。バスソルトなら、落とそうが振り回そうが、壊れるわけでもないし、まさしく天地無用。重くない、かさばらない、日もちして、残らないという、今回設定した要件をすべてクリアする、理想的な商品であるように思います。

 ただ、今回はちょっと見送りました。親しい間柄ならともかく、そうでない男が女性にバスグッズを贈るのはどうだろうという気もするわけで、だったらあぶらとり紙もいっしょだろ! って思うんですが、まあ、そこは気持ちってやつで。でも、このお店はちょっと気に入ってしまいました。お遣い物どうこう関係なしに、見て楽しい、選んで楽しいお店であると思います。

 だから、将来、何回戦目かにはこの店に頼る日がきそうな気がします。

ケンタッキーフライドチキン

 京都では、ケンタッキーのおじさんも浴衣です!

新京極は眼鏡通り?

 そういえば、聞いたことがありました。以前、眼鏡を新調しようと思っていたときのことなのですが、私が探していたのはいわゆる丸めがね、ラウンドフレームであったのですが、これがまた普通の眼鏡屋で売っていないんですね。店頭で聞いて、なくて、もうラウンドは生産していないんですかと問うたらば、眼鏡屋店員氏曰く、新京極ならあるいは……。というのは、新京極には眼鏡研究社という素敵な名前のお店があって、アンティークの眼鏡を復刻して売っているらしい……。そうかあ、新京極かあとその時はラウンド一旦あきらめて、その店にあった中で選んだのですが、まさか今回の探索でこの話を思い出すことがあろうとは思いも寄りませんでした。

 京極井和井を出て新京極通りをあがっていった、右手にその店はありました。といっても、眼鏡研究社ではありません。田丸眼鏡。店の表にショーケースが置かれていて、中を見てみれば丸眼鏡がぎっしり。鼈甲を模したセルフレームは鼈甲色から黒まで各種取りそろえ、そしてメタルフレームも充実。黒、赤、茶、銀、金色、とにかくよそではちょっと見られない充実のラウンドフレームですよ。驚きました。驚きながらしげしげのぞき込んでいたら、店舗から店主があらわれて、どうぞどうぞ見ていってくださいとのこと。普段の私ならいいですなどといって断ったろうところですが、眼鏡にそれほど心とらわれたか、素直に説明を聞く気になったのでした。

 試してみてくださいと勧められるままにつけてみたのは、まず黒いセルフレーム、もちろんラウンドです。実は私はこれまでメタルフレームしか使ったことがなくて、だからこれがはじめてのセルフレーム。思ったよりも質感、ボリュームがあって、バインディング感が強いという感じでした。鏡で確かめてみると、眼鏡の個性が強すぎて太刀打ちできない感じ。こりゃ難しいなあ。大村崑の偉大さをあらためて思います。

 これらセルフレームの眼鏡、もともとの型は、昔に作られた鼈甲のフレームなのだそうです、見せていただきました。鼈甲色というべきなのかも知れないけれど、琥珀色したフレーム、それがこれらの型になったオリジナルなのだそうです。残念ながら傷みが出て、そこかしこにひびも入ったりしているので売り物にはならない、使えないというのだそうですが、もしこれを今復刻するとすれば百万単位の価格になるだろうという話。まあ、もともとが鼈甲ですからね、材料の点からハードルは高いです。

 こうした貴重なフレームを型取りして作られたセルフレームの丸眼鏡、作っているのは福井でという話でしたから、おそらくは鯖江でしょう。この店で扱われている眼鏡、少なくともラウンドに関しては福井製である模様で、次いで出してもらったメタルフレームも福井で作られているものだそうです。おなじみのチタンがあるかと思えば、サンプラチナという医療器具、入れ歯に使われたりもする金属でできているものもあって、これはアレルギーであるとかが出にくいのが特徴であるそうです。みればフレームに細かく彫刻がされていて、遠目に見ればシンプルだけど、近くに寄ると結構凝っているという塩梅。ちょっと好みかも。欲しくなったのはこの瞬間だったように記憶しています。

 サンプラチナフレームの眼鏡、私は二種類試してみて、一つ目はオーソドックスなもの、そして二つ目は鼻当てがないタイプ、より古いスタイルだといいますから、オーソドックスなのは実はこちらなのかも知れません。そして、私が気に入ったというのはこちらの古いスタイルのものだったのです。

 古くてレトロな雰囲気があるからいいと思ったわけではないのです。むしろより実用的な側面でそう思った、というのは、私が今使っている眼鏡は、ちょっと角張ったチタンフレーム、スタイルは結構気に入っているのですが、長く使っていると鼻当てがつらくなってくるんです。鼻の上部、眉間のちょっと下あたり、ここがくーっと疲れてきて、午後などは仕事に支障を来すほど。眼鏡外してモニタ見てますからね。こんな具合に疲れがたまってくるのです。

 鼻当てのない眼鏡は、ブリッジの裏に金属の張り出しがあって、それで眼鏡を支えるようになっています。鼻の側面よりも鼻の表にふれるという印象で、疲れのたまっている部位に荷重がない、それで楽と感じたのかも知れません。けど、フレームはずいぶんと軽く感じたから、いずれ欲しいなあ、いや手持ちはあるから買ってしまおうかと迷って、けれど今使ってしまうわけにはいかないからと考えあらため、今回は見送ることにしたのでした。

 田丸眼鏡を出て、ちょっとあがると、眼鏡研究社が左手に見えてきます。この店は昔ながらといった雰囲気のある田丸眼鏡とは違って、ずいぶんと今風な感じ。明るく広い店内、入ってすぐに大きなテーブルがあって、そこにずらりと眼鏡が並べられています。ラウンドラウンドラウンドって感じで並んでいて、正直新京極はすごいなと思いました。一般に手に入りにくいラウンドを、ここなら気の済むまで選んで買うことができるわけで、見ればバリエーションも結構豊富。ラウンドフレームを欲しいという人があったら新京極はかなりよい条件の揃った場所なんじゃないかと思います。

Explanatory leaflet
眼鏡研究社店内にあったリーフレット。眼鏡研究社の扱う商品が、百数十年間のデッドストックからの選りすぐり(レプリカ)であることが、そして材質等について説明されています。
Harry Potter's glasses
六角上ルに位置する川島明光堂では、ハリー・ポッターの眼鏡(オフィシャル品)が展示。

誠心院

 一気に六角まで上がってしまいましたが、実際にはゆっくりといろいろを見ながらでした。ということで、蛸薬師ちょっと上がったところまで戻ります。

Buddhist temple 眼鏡研究社を出て少し上がったところに、誠心院というという小さなお寺がありました。私はこれまでほとんど意識することなくいたのですが、今回はちょっといろいろ見てみるつもりであったので、通ってみました。そうしたら、思いもかけない場所でありまして、なんと和泉式部のお墓があるのですね。和泉式部というのは平安時代の歌人です。古典の授業なんかで日記文学に触れた際に、和泉式部日記というタイトルを耳にした覚えのある人は多いのではないかと思います。私なんかもその一人で、まあつまりタイトルしか知らないっていってるんですが、でも歴史上の人物ですよ。その人の墓が新京極通りにあるだなんて、まったく知らない話でありました。

Izumi Shikibu's grave
和泉式部の墓
Prayer's wheel
和泉式部の墓に向かう途中に鈴成り輪という石造りの車があって、これを回しながら願を掛けると叶うとか。いわゆるマニ車の一種ですね。知恵と恋愛に御利益があるそうです。

ヘタな表札屋

 新京極には有名な店、ちょっと知られた店なんてのがたくさんありますが、この店もそうしたもののひとつでしょう。まあ、なにはなくともこいつを見てください:

 どうでしょう。ヘタな表札屋。こう書かれると人間不思議なもんで、なんかひいきしたくなるというか、さらにいえば腕もわりかし悪くなかったりするんじゃないの? なんて思ったりなんかしましてね、よく日本一まずいラーメン屋とか書いてる店があるなんて紹介されたりしますが、本当にここにしても同じような味があると思います。

 この店、光昭堂は昭和十年創業なんだそうです。70年やってます、ちょっとした老舗です。今まで利用したことのない店で、これからも利用する機会があるかどうかわからないですけど、ちょっと押さえておきたい店、キャッチフレーズであると思います。

誓願寺

Buddhist temple そして、またお寺によりました。お寺の名前は誓願寺。にしても、私は子供の時分からちょくちょく新京極にはきているのですが、こうした寺社に関してはまったくの興味の外であったらしく、この寺に寄ったのもはじめてなら、そもそも意識にとどめたのもはじめてなのではないかと思います。

 寺、山門をくぐるとちょっとした中庭、そしてそこに本堂があって、京都という街のちんまりとした区画らしさというべきか、都であった街の密度の高さを思います。ともあれ伽藍の階段を上っていきました。階段を上りきったそこは、大きな広間がありまして、まさしく本堂なのでしょう。正面には金色の仏様が座していらっしゃって、阿弥陀如来であるとのこと。本来私はこうした場を聖域と諒解して、写真を撮ることを潔しとしないのですが、この日この時ばかりはなんの思いの違いがあったか一枚正面から写真を撮って、それが次の写真:

 この寺は、芸事に御利益のあるとの話です。なにかしらのよい変化があればよいなと、他力本願ですか? 他力本願ですね。けれどこちらのご本尊は阿弥陀様だからそれでよいのです。私は私にできることをやっていきたいと思います。

新京極通り終わり

 新京極はそんなに長い通りじゃありません。姉三六角蛸錦の三から四まで、突き当たりが三条通りに繋がっていて、そこで終わりなのです。さっきの誓願寺は六角を少し下がったところにあって、だから誓願寺を越えれば、いよいよ通りの終わりが見えてきます。

 じゃあ、これでこの日の散策は終わりかといいますと、いやいやそんなわけはない。まだこの近くには見て楽しいスポットがありますから。といいたいところですが、ちょうど時刻が昼を回ったところなので、このへんでお昼にしたいと思います。

 と、その前に:

Yatsuhashi making
八ッ橋の実演販売。このへんは八ッ橋売る店がやたらあるんですが、この店は八ッ橋屋西尾為忠商店。生八ッ橋もいいですが、私は焼いた八ッ橋が好きです。
Shin-Kyogoku Street
三条通りから見た新京極通り

三条通り

Sanjo Street 新京極から三条に入って、実はここもアーケードの架かった商店街であります。その名も三条名店街。とはいうものの、私はここでは楽器屋くらいしか利用したことなくて、十字屋ですね。京都では結構知られた楽器店であると思います。私が昔サクソフォンを買ったのは、河原町御池近くにあった十字屋でしたが、その店は今は三条店に吸収されたんだそうで、つまりここ。もし私がサクソフォンを再開することがあれば、この店訪れて調整を頼むことだろうと思います。

 さて、すっかり昼時なので、三条名店街でなにか軽く食事をしましょうか。できればあんまり高くないといいなと思ったのですが、ちょっとしたところに入るとなるとちょっとした値段になるのが京都という街だと思います。だから、どこかいいところないかなあ……。こうして私が吸い込まれていった店は、――ギターショップでした。

Holly's Café

 ギターショップのことは書いても仕方ないので割愛。お昼はどうしようかなとぶらぶらと三条通り歩いていて、最初は蕎麦にしようかとも思ったんです。けど蕎麦ってちょっと高いからなあ、なにしろ一人そぞろ歩きですからね、敬遠しまして、そして見付けたのが店舗の表にずらりとダッチコーヒーの独特のドリッパー並べた喫茶店です。おお、ダッチコーヒー。実は、私の最寄りの駅前にダッチコーヒーを出す喫茶店があるんです。ダッチコーヒー、すなわち水出しコーヒーなのですが、雑味の少なさが特徴であるといいます。いっぺん飲んでみたいものだなあとかねてから思っていたのですが、その喫茶店とはおり悪く都合が合いませんでね、私が仕事から帰る頃にはしまっているし、休みの日は出歩かないしで、とにかく縁がない。ところが今日という日に、ダッチコーヒー出す店と出会ってしまった。これは入らねばなるまいと、誰にいわれたわけでもあるまいに、その気になって入り口を通ったのでした。

 その店、名前はHolly's Café。チェーン店なのかな? けれどこれまで見たことのない店、聞いたことのない店名なので、このへんだけで展開している店なのかも知れません。名前が英語風だったりフランス語風だったり、出しているコーヒーがオランダ風だったり、非常に無国籍な感じもしますが、それはここが日本だから仕方がない。

 店内は白で統一された、明るく清潔な感じ。カウンターに並べられた軽食を選び購入、イートインも可能ですという、そういうタイプの店ですね。私は、まあ軽く食事できればいいや、タマゴサンドと、そしてコーヒーはもっとも基本的なものだろうブレンドを選びました。

 コーヒー一口飲んで、コーヒーです、間違いありません。ごめんなさいね、私は違いのわからない男なんですよ。飲みやすいコーヒーかなとは思いましたし、しっかりとしたコーヒーだなとも思いましたが、感想としてはこんな感じ。ただ、まずっ、とは思いませんでした。コーヒーを飲んだときに、変に薄いと思ったり、水の中にコーヒーの味が混じってるかなみたいな弱いのとかにがっかりしたりすることはありますが、この店に関してはそういう感じはありませんでした。だから、しっかりとコーヒー。ちゃんとした、掛け値なしのコーヒーを飲める、そんなお店です。

 サンドイッチもいい感じ。卵がたくさん入っているだけでなく、レタスもしっかりと入っていて、ボリューム感が嬉しいです。食べて、あの野菜がしっかりと入っている食感というのはやっぱり悪くない。値段にしてもコーヒー210円、タマゴサンド290円で手ごろな感じだし、それでこの充実感ですから、お昼など、軽く食事したいときにはよいなあと思いました。

 ところで、私は知らなかったんですが、この店ってもとからふね屋珈琲なんですね。からふね屋といえば、京都では老舗ですが、それがこういう名前になって展開しているとは知りませんでした。

Coffee extracting
ダッチコーヒー、抽出中

寺町京極

Teramachi Kyogoku Street 新京極の隣には寺町京極と呼ばれる商店街があります。北は三条から南は四条まで。四条通りから南に下がれば、寺町の電気街と呼ばれる、電器屋の多く集まるスポットが広がるのですが、今は日本橋(もずいぶん変わりましたけど)あたりに出ることも普通になったし、あんまり寺町の電気街には縁がありません。

 さて、寺町京極は新京極ほどではないですが、それなりに繁華な通りです。私は普段、寺町京極どころか新京極にも縁のない暮らしをしていますが、けれどせっかくきたのだから、寺町京極も歩いてみよう。なにか見つかるかも知れないし、との思いで歩いたのですが、結局これという店は見付けられず、途中錦通りへと移っていきました。

 一概にはいえないのだけれど、新京極に比べて、寺町京極は少し大人向け、シックな装いのある通りであると思います。この印象は子供の頃に両通りを歩いてみて、新京極は楽しくわくわくしたけれど、寺町ではそれほどでもなかったという、そんな思い出があるためかも知れません。寺町京極はむしろ親が見ていた、そんな記憶があります。

錦小路通

Nishiki Street 錦小路通は、これまで通ってきた新京極、寺町京極と違い、東西に走る通りです。ここには錦市場がありまして、狭い通りの両側にずらりと店店の並ぶ、ちょっとした名所になっています。扱われているものは、日用の雑貨や生鮮食品などのいろいろで、錦市場と聞きますと、私なんかは正月の準備の買い出しを思い出します。特に私は生麩が好きで、だから錦にくれば生麩をこうてくれと頼んで、こうした風景はおそらく京都のどこのうちにもあったのではないかと思います。

 さて、今回の行程に錦市場を加えたのは、本来の目的を達成する(お遣い物の購入)ためではなく、せっかく新京極にまでいったのだから、ついでにそのへんも見て回ろう、錦なんかどうだろうと、そういう理由からだったのです。そもそもここは市場であり、主に売られているのは日用品、食品の類いですからね、お遣い物の三箇条、食べ物でない、日もちする、かさばらないに抵触するだろうと、だから最初から錦は見るだけと、決めてかかっていたのでした。

 ところが、錦市場もずいぶん変わってきているようで、それこそ昔の印象だけではもう語れない場所になってきているなと実感しまして、例えば嵐山ちりめん細工館ですが、こうした土産物店みたいなものは昔の錦にはなかったと思います。ちりめんで作られた小物たち。例えば次に上げるようなものですが、見た目に可愛いこともさることながら、ちりめん、布地のもつ風合いの柔らかさもあって、贈ると喜ばれそうな感じがします。ただ、今回はかたちの残らない消えものに限るという条件付きですから、残念ながら見送るほかなかったんですが、それほど高いものでないから、無用に気を使わせるということもなさそうだ。覚えておきたい店だと思ったのです。

 ですが、変わったといってもそれは一部だけで、錦市場全体には昔ながらの雰囲気が今も色濃く残っています。鮮魚、野菜を売る店店は呼び込みも威勢よく、茶店は店の表に大きな茶缶を並べながら焙じる茶の匂いも香ばしい。そして目にも楽しいのは菓子屋の類いで、和菓子の色合いは華やか、細工も上品です。市場としての活気は消えておらず、それはやはりこの京都という街に暮らす人たちの息吹があるからなんだと思います。街の暮らす人たちが、文化も含めて生活の匂いを支えているのだと、錦市場あたりにくると肌に感じられるように思います。

Japanese tea
茶店に並べられた茶缶の数々。あたりには茶のいい香りが漂います。
Dry Japanese confections
京都には地蔵盆という行事があって、そこでふるまわれる卍のかたちした干菓子です。もそもそしてるその触感が好きでした。
Confectionery
京菓子の数々。これはシンプルだけれども、いろいろ凝ったものもたくさん並べられていて、見てるだけでも楽しいです。
Dried bonito
かつお節。今は削り節が一般ですが、京都市内では普通にかつお節をこうして買うことができます。それもあちこちで。

錦小路通、ちょっと面白かったお店 #1

 錦市場を歩いていると、なにやら楽しげな会話が聞こえてきたので、ちょいと寄せてもらったのです。その会話というのは、店頭に飾るなら白い恋人がタイムリーだろうとかなんとかかんとか。ええと、きっと一年くらいするとなんの話かわからなくなるだろうから補足しときますと、ちょうどこの時期に白い恋人の消費期限改竄事件なんてのが話題になっていましてね、それで店頭に白い恋人のドリンクを飾ろうだなんていう話をしたはったんです。誰が? ええと、青果店のおじさんです。

 多分、このおじさんの趣味なんでしょうね。ご友人からかと思うんですが、いろいろお土産に貰ったものを店頭にちょこっと並べたはるみたいでしてね、そこには私のはじめてみるおでん缶が! 写真撮らせてもらっていいですかと断ったら、いいけど京都で撮っても値打ちがないよ、みたいにいわれました。まあ、確かにそうだ。

 おじさんのいうことにゃ、奥にはラーメン缶もあるのだそうで、ここでひとしきりラーメン缶の話題になって、あれは麺がコンニャクベースなんですってねと聞いたらば、なんとその麺を作っているのが京都の市内、錦市場の近所なんだそうです。あら、それは知らなかった。

 などなどいろいろ話して楽しかったのですが、よくよく考えると、本来の商品である青果の話はまったくしませんでした……。そういや写真も撮ってなかった。まあ、こういうこともあります。

錦小路通、ちょっと面白かったお店 #2

 錦市場のちょっと面白かったお店第二弾は、ふと通りかかった店先、目に留まった黄色い案内でありました。

 書かれている内容に注目です:阪神タイガース昨日勝ちました!! うなぎ蒲焼一本につき100円引きにします。そう、明らかに店主が阪神ファンです。阪神タイガースというとどうしても大阪という印象が強いのではないかと思います。優勝に興奮して道頓堀川に身を投げるファンといった映像も手伝って、タイガースというと大阪みたいに思われがちだけれど、その人気はというと大阪にとどまらず、近畿一円に広がっています。もちろん京都もそう。私が昔働いていたスーパーマーケットは、別に阪神系列でもなんでもないのに、優勝が見えるとセールの準備をして、買っても負けても売り出していました。そういう土壌があるのです。阪神の本拠地である兵庫、印象に強い大阪に、京都や滋賀にも根強い阪神びいきがあって、そしてそうした思いは、ふとした街中に見付けることが可能です。この、鰻屋の店先に張り出された年季も入っていそうな案内、ここにも根強い阪神への思いが見て取れて、なんか面白いなと思います。自分の好きなチームを応援したいという、素朴な気持ちがこうしたところにあらわれてくるところが面白いと思います。

ビールを飲む

 この日も暑い一日でした。強い日差しが照りつける、そんな日で、新京極、寺町京極、錦はアーケードかかっているからよかったものの、もしこれが炎天の下だったらきっと私はへばってしまっていたことでしょう。

 錦市場を歩いていたら、途中の酒屋にビールサーバーが置かれていまして、見ますと地ビールだとか。ビールかあ、こんな日に飲むときっと美味しいだろうねと思って、けれど最近はすっかり飲まなくなったからどうしようかと迷ったんですが、いって戻りの二度目の酒屋、せっかくだから飲んでおこうかと一杯いただくことにしたのです。

 京都で地ビールですから、最初京都1497かななんて思っていて、店主に聞いてみましたところ、1497は祇園祭のときに出るやつなのだと教えてもらえました。そうか、そういえば以前祇園祭宵山だったかに1497を飲んだことがあったっけ、ちょっと昔を思い出しました。

 このビールは、黄桜のなのだそうです。黄桜といえば伏見でしたか、京都における酒どころですね。飲んでみて、きりりと冷えたビール、ああ美味しいと思って、ビールは一口目が最高だとはよくいう話ですが、それは実際だと思います。ちょっと高いビールだったけれど、たまにはこんな贅沢も悪くないかなと思える瞬間でした。

錦のお土産

Rice cracker making 錦市場、寺町通りを背にして左手側の並びにせんべいを手焼きしているお店がありました。ちょうつがいで繋がれた二枚の鉄板で、はさみ焼くタイプのせんべいです。広げた鉄板に生地を流したら、豆や米、ピーナッツなどをぱらぱらとのせて、はさんで、焼く。私は子供の頃から、こうした製造工程を見るのが好きで、一通り焼き上がるまでぼさっと眺めていまして、あんまりに面白かったからせんべいを買って帰りました。

 より取り三袋で千円だったかな? なんでこんなに記憶があやふやかといいますと、買ったはいいけど、私、食べてないんですよ。油断していたら家族に食べられてしまっていました。てゆうか、残しとけよとか思いますけど、というか、袋いつの間に捨てたんだ、店の名前わからなくなったじゃんか。というわけで、書けるような感想はないのでした。玄米のは食べたかったんだけどな。

私の選択

 こうして一日新京極界隈を歩いてみて、なにか掘り出し物はあったのでしょうか。残念ながら、これというものはありませんでした。よさそうかなと思われるものもあったけれど、あえて押すほどには感じなかった。なので、当初の予定通り、よーじやへと向かいました。

 よーじや本店は、新京極四条上がるを右に入ったところにありまして、わりとこぢんまりとした感じ。私の見慣れているよーじやは祇園店ですからなおさらそんな風に感じたものでした。

 さて、一口によーじやといっても商品は多岐にわたります。有名どころはあぶらとり紙ですが、他にも石鹸の類い、化粧用具の類い、たくさんあって、そうした中から自力で選ぶのは至難の業と思われます。ですが私には目論見があって、それはギフトセットです。お遣い物として選ばれることの多いよーじや商品ですから、人気のある商品を集めたギフトセットなんてのも用意されているのですね。それも何種類もあって、セットだけでも目移りするのですが、私には目当てがありました。Webショップで見た爽やか夏セットです。

 爽やか夏セットを構成するものは以下のとおり:

 ところがこれってWebショップ限定のもので、店舗では同じセットを置いていないのですね。なので店員さんにお願いして、これと同じセットを作っていただきまして、ただそのままというのもどうかなと。なにしろセットではないのですから、いくらでもアレンジはききます。なので石鹸を、人気のあるという柚と米ぬかに替えてもらって、それで包んでいただきました。

 こうして選ばれたよーじやのセット、どれほどに喜んでいただけたか、それはわかりません。けれど、こうして選ぶということがまた楽しいことであったと、そんな風に思っています。頻繁にはないことだけど、たまにはこんなことってあってもいいな。そんな楽しい買い物でありました。


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公開日:2007.08.18
最終更新日:2007.10.06
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