たくさんあるのも善し悪しだ

 ボブ・ブロズマンというスライド・ギターの名手がいて、その人の演奏が無料ダウンロードできるというから米アマゾンにいってみた。フリーダウンロードといって、無料で音楽ファイルをダウンロードさせるサービスがあるというのだ。いったいそれはどんなものだろう。

 ブロズマンで検索した結果にフリーダウンロードの文字を見つけて、確かに私はMP3ファイルをダウンロードすることができた。アカウントを作る必要はあったが、なに、メールアドレスとパスワード、後は名前を入力するくらいなもので、なんの造作もない。これだけの手間で、音楽ファイルのダウンロードをさせてくれるアマゾンひいてはアメリカという国はなんと太っ腹なのだろうと恐れ入った次第である。

 ブロズマンを聴いてみて、他にはどんなものがあるのかと欲が出た。フリーダウンロードのカテゴリを開き、ジャンルを選択する。私が選んだのはFolkだ。しかし選んだ先に曲の一覧はなく、たくさんの記事とさらに細分化されたジャンル分けがあった。Traditional British & Celtic Folkを選ぶと、膨大な曲目リストが出現した。その数二百五十。私には、このすべてをダウンロードできるとは思われず、フォークジャンルのさらに下位ジャンルでこれなら、フォーク全体ではどれほどの曲目があるのだろう。全カテゴリではどうであろうか。気が遠くなった。打ちひしがれた気分で立ち去った。

 もしこれが、数十程度の数に収まっていたなら、私は気持ちよくダウンロードしたことだろうと思う。しかしあまりのボリュームの大きさに圧倒されて、選択肢が多様に示されることは素晴らしいことだと理解しながらも、逆に不自由にもなりうると実感した。手当たり次第にダウンロードして、私のコレクションをこれらの曲であふれかえさせることができたら、きっと素敵に違いない。しかしそれは本当に素晴らしいことなのだろうか。


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公開日:2005.10.31
最終更新日:2005.10.31
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