今度こそ息子はもう死にました

 今日は朝から頭が痛いってのに。ただでさえ最近は、些細なことがいちいち気に障って仕方がないというのに。こんな日に限っていやなことが起こるというのは、どういうことだい。あんな電話とらなきゃよかった。人を馬鹿にするにもほどがある。

 電話を受けたときから嫌な予感はしていた。名指しでの呼び出し。電話先、バックグラウンドがざわざわと騒がしい。男が相手ということは、投資やなんかの類いだろう。予感は見事的中だったが、ならなぜ最初の段階で、体よく電話を切らなかったんだと悔やんでならない。最近、この手の電話を受けてなかったので、勘が鈍ったとしか思えない。

 いらんとは言ったんだ。それこそはじめっから、いりませんの一点張り。投資しようにも金がない、そもそもこういう手で儲けるつもりはさらさらないので、うまい話だったら別の人を誘ってあげてください。リスクを怖れてるんですか? リスクどうこうは関係ない、僕はこういうものには手を出さないんです。儲かる話なんですよ、お金が増える話なんだからやりなさいよ。だから、手段が気にくわんといってるんです、よそ当たってください。

 それでも、礼は失さないように気はつけていたんだ。しかし……

 友達いるんですか? そりゃ友達くらいいますよ。友達にもこんなものの言い方するんですか? しませんよ。じゃあ、なんでこんな言い方するんですか。だってあなた友達じゃないでしょう、そもそも儲け話だなんていいますが、こうして電話に拘束されることで、僕の時間は目減りしてるんです、コストを支払わされてるんですよ。あなた、コストコストといいますが、そこまでいうなら職場でもそれだけコストに気を配ってるというんですか。

 どうやらこのへんで僕は切れたらしい。怒鳴りつけて、受話器を叩きつけるようにして切るやいなや、モジュラーを抜き電話を壁に投げた。

 こんなにむかつくのも珍しい。もう二度と電話になぞ出ない。


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公開日:2002.02.16
最終更新日:2002.02.16
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