二千一年二月

日本のバレンタインの聖日

 二月十四日、多くの日本人は憂鬱だ。彼らはチョコレートに翻弄される。なぜ、チョコレートがわれわれを悩ませるのだろう? それは日本の奇習のためだ。

 二月十四日には、女性がチョコレートとともに男性に愛を告白することになっている。マスメディアはこの日が近づくとこのことを喧伝する。恋人や片思いの恋を持つ女性はチョコレート売り場をそぞろ歩き、そのどちらも持たない人は、自分は不完全じゃないかと悩んだりもする。

 ほほ笑ましい風習。しかし、同時に厄介な顔も持ち合わせている。日本語には、「義理」という言葉がある。「義務」という意味に似て、異なった言葉。「義理」は内なる共同体による強請だ。共同体から排除されることを恐れて、その秩序に従うこと。それが「義理」だと、わたしは思っている。

 バレンタインの聖日には、女性たちは、「義理チョコ」と呼ばれる、愛のないチョコレートを配る。今年は僕ももらってしまったので、愛のないお返しをしなければならないだろう。

 日本人の心情は、古くさい「義理」のもとで、まだ自由ではないのだ。

(初出:Les douze mois au Japon, mais selon moiオリジナル:フランス語)


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公開日:2001.03.05
最終更新日:2001.09.02
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