いつか引っ越しする日

 五年はもつと思っていたのだけれど、意外と早くこの日が来てしまった。なんのことかといいますと、こととねのWebスペースの容量の問題です。

こととね、容量問題の顛末

So-net U-Pageは5MB

 こととねは、So-netの提供するU-Pageというサービスを利用して、開設されていました。はじめは有料だったU-Pageサービスはその後無料化され、運用資金の面では非常に有利だったのですが、反面問題も少しばかりありました。CGIを設置することが出来ないのはよいとしても、U-Pageの提供するCGIのバリエーションが貧弱。このため、こととねのBBSはGeocitiesの提供するものを使っていました。ディレクトリの容量が5MBしかない。U-Pageサービスが開始された当時、5MB Webスペースといえば標準的な容量でした。しかしその後、プロバイダの提供するディレクトリ容量は増加する傾向にあり、一向に5MBより増えることのないU-Pageサービスは、明らかに見劣りするものになっていたのです。

 もしかしたら、いずれ5MBから10MBあるいは20MBといった、より大きな容量に改訂されるかも知れない。こういった期待を、こととねを運営するこの一年あまり、常に抱いてきました。CGIの問題は、別に構わなかったのです。むしろ、テキスト中心で新技術に傾倒することのないこととねにとって、CGI問題はたいしたことではありませんでした。しかし、逼迫するWebスペースの問題は、毎日更新を目標とした最初の一年目において、見過ごすことの出来ないものにまでなっていったのです。

想像以上に増えたデータ量

 こととねはテキスト中心のサイトであり、画像は極力使っていません。必要でないものはいらないをモットーとして、無駄を廃してきた結果であるともいえるでしょう。ですがその背景には、5MBまでしか公開できないというという無言の圧力もあったのです。

 テキスト中心で展開していこうと考えた当初、5MBの容量を埋め尽くすだけのデータは簡単には用意できないだろうと踏んでいました。単純に計算して、テキストだけで5MBを使おうとすれば、二百五十万字ほど書く必要があります。四百字詰め原稿用紙にして六千枚あまり。こととねでは、八百字単位で文章を作成する傾向が強いので、三千頁はいけそうです。HTMLのコードを加味しても、二千頁を下回ることはないでしょう。一年は三百六十五日なので五年はもつだろうと、この五年の間に容量も増加するだろうと。こんなことを思っていたのです。

 しかし、この前提が間違っていました。現在、こととねには六百あまりのHTMLファイルがありますが、これがすでに3MBほどになっています。うち画像は、300KBも占めていない。となれば、テキストファイルだけで3MBを消費していると考えてよいでしょう。そしておそらくは、使用ディスク容量は軽く3MBを上回っているはずです。これでは、いつアップロード不能になるか、分かったものではありません。

データの振り分け? それとも引っ越し?

データ振り分け

 当初、雑誌になろうとしていた時代、こととねは来るべき容量不足を、データの振り分けによって解消しようと考えていました。つまり、複数のプロバイダからWebスペースを借り受け、データをその複数のWebスペースに少しずつ小分けにしてアップロードしようとしていたのです。この考え方に従い、@niftyに "Au coin du monde" が、apgeoに「僕のお絵かき計画」と「開かない眼」が開設されているわけです。ですが、「こととね」というひとつのサイトを考えた場合、それが実質的に複数のサイトに分割されることに、少々の疑問、そして嫌悪感も感じるようになっていました。

 ひとつのサイトと見せて、実際は複数のサイトにデータがある。これは、個人の開設するWebサイトにおいては特に珍しいことではなく、常套的に用いられている手段です。そのようなサイトをブラウズしていて、ドメインが変わったことに気付いては、ここのオーナーも容量不足に悩まされているのだと、妙に親近感を沸かせたものです。

 ですが、このデータ振り分け法に踏み切ることは出来ませんでした。あくまでも、振り分けは苦肉の策なのです。ひとつのサイトはひとつの領域(ドメイン)のもとに管理されるという理想を考えたとき、あちこちの領域にデータを分散させることで、自分がまるで流浪の民のようになる。それが堪えられなかったのです。

 仮にこととねがCGサイトであったならば、複数のプロバイダに画像ファイルだけをアップロードしておき、それをメインサイトから引っ張るという手段も使えたでしょう。これならメインサイトのドメインを、見た目にだけは固定することも出来ます。ですが、こういった力技やプロバイダによっては横紙を破ることになるような手は使いたくありません。それに、こととねはテキスト主体であるために、根本的にこの手段は不可能でした。

引っ越し

 となれば引っ越ししか手段はないでしょう。しかし、引っ越しとなればいくつかの問題が生じてきます。

 主な問題は予算でした。どれくらいのディレクトリ容量が必要なのか、その容量を得るための費用はいくらなのか。この両要素を天秤にかけ、費用対効果を考えてやらなければなりません。いくつかのプロバイダをまわり、ホスティングも視野に入れ、検討してきました。容量は多いにこしたことはないのですが、反面支払える費用は少ないほうがいいに決まっています。そして結果的に、あるホスティング・サービスを利用することに決定したのです。

 ドメインの取得までは、当初の計画になかったことです。けれど、ホスティングを視野に入れたときに、同じやるならとことんやろうと、悪い虫がうずいてしまいました。

 となれば、ドメイン名をどうするか? これが問題です。最初に思いついたのは、snowdrop.jpでした。snowdropというのはSo-netで取得したメールアカウントで、僕はこのsnowdropという名に非常な愛着をもっています。ですが、サイト名がこととねでありながらドメインがsnowdropという、サイト名とドメインが掛け離れている違和感から、そして世間にあふれるsnowdropのイメージから、素直にkototone.jpを取得することに踏み切りました。

 いたずらにsnowdropをキーワードに検索をかけたところ、たくさんヒットしたのですよ。花のsnowdrop、ラルクのsnowdrop、十八歳未満はプレイ出来ないゲームのSnowDrop。とにかくなんでもありで、ちょっと辟易。なのでsnowdropは、すっぱりとあきらめたのでした。こととねに関しては、他に類する名前がないので、オリジナルという点で好ましいと思ったのです。

デッドリンクの問題

 引っ越しが決まれば、今までSo-net U-Pageに公開していたデータをどうするかも問題です。

 こととねのポリシーのひとつとして、デッドリンクを作らないというものがあります。詰まる所、いったんアップロードしたファイルは削除しないということ。このポリシーがなければ、きっと古いファイルから削除して容量不足の解消をはかったことでしょう。ですがデッドリンクというものはいやなものです。そこに自分の求める情報があったかも知れないのに、そのデータがもう存在しないといういやな気分を、自分もそして人にも味合わせたくないと思うのは、ある意味自然なことでしょう。

 そのため、So-net U-Page上にあるファイル群は削除しないと決定しました。いずれSo-netを撤退するときにはファイルも削除されるでしょうが、So-netを利用している間は、すべてデータを残しておくことにしたのです。トップページと更新履歴にkototone.jpへのリンクを用意し、こととねに属する各カテゴリのインデックスへのリンクを、新サイトに誘導するものに変更しました。

その後

 実をいうと、最初は引っ越しは避けたいと思っていました。URIを変えたくなかったのです。変更の通知が面倒とか、うざったいから変えたくなかったわけではありません。今まで使ってきたものへの愛着が問題だったのです。だから、いちばんよかったのはU-Pageの容量が増えて、そのまま営業できることだったのですが、実際引っ越ししてみると、U-Pageを引き上げてよかったと思ったりする自分もいるのでした。


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公開日:2001.11.11
最終更新日:2001.11.11
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