シリーズ iBook G4 ららら

OS Xにおける文書作成環境(和文編)

 OS 9での文書作成は、簡単なものならmi、きっちりしたものを書くときにはシステムソフトエディタを使っていました。ですがシステムソフトエディタは2001年三月で販売終了され、当然開発はそのずっと前に終わっていて、その最盛期は漢字Talk 7.5時代だったという古参ソフトでありました。でも便利だったんです。文字を打つことだけに特化されて、電子辞典ビューアをショートカットで呼び出せるというのも便利で、ですが時代は前へ前へと進み、過去は置き去りにされるのが世の道理なのです。

 だから、あれほど好きだったアプリケーションでしたが、別れ時が来てしまって……、さよならです。

エディタの選択

 エディタはもうとうから決めていたとおり、mi以外には考えられませんでした。なので選ばれたのは当然ながらmi。迷いはなかった、というか選択肢がなかったのだな。

システムエディタモード miにはモードという概念があって、編集対象の文書に応じた機能を選別、カスタマイズができるのですが、そこにシステムソフトエディタモードを作ってしまいました。名付けてSSEditorモード。けどシステムエディタの面影はみじんもありません。

フォント

 システムソフトエディタの標準フォントはNagahamaというビットマップフォントで、一旦はこれをOS 9からコピーしてきてインストールしようかとさえ思ったのですが、僕は必要最低限以外のものをインストールするのが嫌いです。なのでOS X標準のフォントであるヒラギノを使うことにしました。ヒラギノ角ゴのウェイト3です。ディスプレイ上で文書を編集するには、これが一番見やすくすっきりして美しかった。これを12ポイントで表示させます。

ルーラー

 SSEditorモードは、こととねでの八百字しばりに対応するためのものと考えていました。というか、システムソフトエディタで作文するときはほぼ間違いなくこの用途でして、文字数のしばりがないならDreamweaver上で直接編集しますし、他に文章を書くことといえばメールくらい。メールはメーラーで書くから外部エディタは使わない。と、このように必然的に文字数が重要になってくるSSEditorモードにはルーラーが必要でした。一行八十桁、2バイト文字で四十字。ただ困ったことにヒラギノ角ゴはプロポーショナルフォントなので、アルファベットや数字が全角文字の半分ではないのです。

 なぜこんなことが問題になるのかといいますと、miはルーラーの目盛りの基準として、なにか文字を必要とするのです。1バイトスペースでは目が細かすぎます、数字では大きくなりすぎました。アルファベットはもはや論外なのでしょう。というので1バイトカナを使うことにしました。半角カナというくらいですから、幅はきっと全角の半分なのでしょう。ただIMEの設定で半角カナを出力しないようにしているので、ネットに半角カナを探しに出ましたよ。

 半角カナといってもなんでもいいわけではないのです。欲しかったのはです。開口音阿は万物の根源にしてすべての萌芽する大本なのです。なので必死でアを探して、アップルストアに関するディスカッションでやっと半角アを見つけることができました。

 アをコピーしてルーラーを表示させてみたらもくろみ通りにきっちり八十桁を示してくれるルーラーができました。素晴らしい! 素晴らしいです。

ウィンドウサイズ

 最後にウィンドウサイズを決定して終わりです。SSEditorモードが扱う文字量は、標準で八百、多くて千二百、あるいは千六百字といったところです。圧倒的に八百が優勢なので、ウィンドウにちょうど八百字が収まるくらいにしようと考えました。こうしておくと、ウィンドウに占める文字量で感覚的に文字数を把握しやすくなるのですよ。重要です。

 一行四十字なので、八百字なら二十行。ですが改段落が何度か行われることを考えて、だいたい二十三行くらいになるのです。というわけで、二十三行が表示されるウィンドウサイズで、しかも半端がないすっきりしたピクセル数を調べてみると、560*520というところですね。

 こうして、デフォルトのウィンドウサイズを決定して、SSEditorモードは完成したのでした。って、ほとんど標準モードのままやん。

電子辞書閲覧環境の選択

 システムソフトエディタの優位の最たるものであった電子辞書ビューア。この代替案は、ひょんなところからひょんなかたちで現れてきたのでした。

 僕が使っているインプットメソッドはEGBRIDGEなのですが、このバージョン14に電子辞典ビューアが標準装備されていたのでした。いや、電子辞典パレットがついているのは知っていたのですが、まさかアプリケーションが着いてくるとは思いもよりませんでした。iBook G4購入が決定した瞬間にアップグレードを決意して、実際注文しました。あの日、iBook SE購入時にIMとしてEGBRIDGEを選んだ僕は果報者でした。アップグレード期間をとうに過ぎているのに、在庫ある限り受け付けるというエルゴソフトの懐の深さにも感謝です。今回も助けられました。Dreamweaver 6.1にアップデートしたあの時も助かりました。ありがとう、エルゴソフト、EGBRIDGE。

 さてさて、この電子辞典ビューアはサービスに対応しているのですよ。サービスというのは、例えば文字列を選択してCommand+Shift+Lしたら、その文字列をGoogleで検索してくれるというような、別アプリケーションに処理を引き渡すことができる機能なのですが、電子辞典ビューアも対応しているのです。もちろん、選択文字列を電子辞典ビューアに送ることができるというもので、Command+Shift+Kというショートカットも設定されています。超便利

 miもサービスを受けることができますので、miで文書作成中、ちょっと気になる用語があったら迷わず選択してCommand+Shift+K。以前、システムソフトエディタではCommand+Dだった機能が、ちょっとショートカットがややこしくなったとはいえ、OS Xでも健在です。

 電子辞典ビューアには三省堂『新辞林』と研究社『新英和・和英中辞典』がバンドルされていて、これだけでも充分といえますが、使い慣れた岩波書店『広辞苑』を追加しました。『広辞苑』はシステムソフトエディタとのセットで買ったもので、第四版ではありますが日常の用には充分足ります。ただ残念なのが、システムソフトエディタバンドルの『岩波国語辞典第五版』と『小学館類語例解辞典』が使えないことでしょう。これらはEPWINGではなく、独自規格なのだそうです。

 類語辞典が使えなくなったのはちょっと不便なのですが、これだけ環境を移行して大きく作業環境を変える必要がなかったことにこそ驚きます。そして今度の選択こそ、今後長く使える組み合わせでありましょうから、やっと落ち着く場を得られたように思ったのでした。ただその背後には別れもあった。世の常であります、しばし偲んで、先へ進みましょう。


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公開日:2003.12.03
最終更新日:2004.01.17
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