データをあずけるという感覚

 コンピュータの中にため込まれるデータはどんどん多くなる一方で、昔は百メガ程度で大容量と宣伝を打てたハードディスクも、今では数百ギガという途方もない容量が普通になってきた。さて、それだけの大容量ハードディスクを購入して手もとにデータを持っても、いつ壊れるかわからないのがハードディスクであり、データをたくさん持てばそれだけトラブル時のダメージは大きくなる。リスクを回避するにはこまめなバックアップというのは誰もが諒解している話であるが、わかっているというのとできるというのは少し話が違うからややこしい。つまり、これは私自身がそうなのであるが、バックアップの重要性を理解していても、それを定期的にできるという人間はまれだ。そして、後悔先に立たずという。いざトラブルが起こってはじめて、やっぱりバックアップの重要性を痛感するのだ。

 だが、喉元過ぎれば熱さを忘れるともいうよな。そう、人間は基本的に学習しないもんなのだ。

 ブロードバンド時代になり、Web上に巨大なデータを置くのが現実的になって、状況は一変したと思う。昔は数メガのファイルのダウンロードで数十分とかかけたものだが、今では数百メガのファイルであっても普通にダウンロードしてしまえるような潤沢な環境が整って、そして昔は普通で5MB、多くて10MB程度であったWebスペースも、数百メガくらいの容量を簡単に持てるようになってしまった。

 私の作成するデータというものは今やほとんどWebに公開するものである。私のコンピュータ上にはそれらの原稿やオリジナルデータがあるのだが、もしそれがなにかの弾みで失われたとしても、さほどのダメージは受けないのではないかと予想できる。というのは、最終の成果物であるHTMLファイルないし各種データはWeb上に残っているのであり、ダウンロードすれば当面のデータの確保ができるからだ。もちろんオリジナルデータは失われているし、リサイズ前の画像ファイルを失うのは確かに痛いことかも知れない。しかし、まったくすべてを失うわけではないのだから、痛みは最低限に抑えることができようというものだ。

 先日、私はflickrに参加してみて、早速プロ版にアップグレードしたのだが、アップグレードを踏み切らせたのは、ローカルにデータを持ちたくないという気持ちからだった。いうまでもなく画像データは大きく、毎日毎日とればあっという間に数ギガを数えるだろう。そうしたファイルをすべて手もとに置くとすると、ハードディスクにため込むのはコストの面で問題だろう。となると、適当な頃合いを見てCDないしはDVDに書き出すこととなろうが、しかしそれは面倒だ。なにしろものばかり増える。大量のCD、大量のデータを抱えて、ところがflickrを利用すれば、CDを溢れかえさせることなしに大量の写真を保存できるというわけだ。そう考えれば、flickrに支払う年額$24.95は安いと思った。メディアを用意する必要もなく、バックアップをする必要もなく、それらはすべてflickrにお任せして、なおかつデータの共有ができる。

 理想的だと思ったのだよ。

 現在私の抱えているデータで、そのようにしてインターネット上に置くことのできないものはというと、主にメール、そしてiTunesのAACだ。メールは、例えばgmailあたりを利用すれば解決するかも知れない。そして、データをすべてネットワーク上にあずけてしまえば、クライアントにかかるウェイトは限りなくゼロになる。ハードディスクが壊れたとしても、データに損害はない。クライアントに搭載されるディスクとは、ブートやテンポラリ程度に使われるものになるかも知れない。

 だから、もしかしたら、未来にはデータを手もとには置かないスタイルが普通になっているのかも知れない。そしてその未来はそう遠くないかも知れないと感じている。


わたしの愛した機械へ トップページに戻る

公開日:2006.06.02
最終更新日:2006.06.02
webmaster@kototone.jp
Creative Commons License
こととねは、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(表示 - 継承 2.1 日本)の下でライセンスされています。